企画

□touch!touch!touch!
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「はなれて…お願い…」

小さなころ想像していた高校生の自分と、今の自分には大きな違いがあった。
身長は思ったよりも伸びなくて、そして、今出た声も、びっくりするほどか細く頼りなかった。

でも、

「具合わるいのか?おい、大丈夫?」

顔を覗き込んでくるフレンドリーな男はとにかく綺麗な顔をしていて、そして少しおバカな雰囲気を撒き散らしていて、だから、僕の秘密を悟られる訳には行かなかった。







体に電流が走ったのを覚えている。

誰かは覚えていないけど、仲良しだった優しい男の子。その子がむき出し僕の腕を何気なく触った瞬間、だった。

気持ち悪いのに、気持ちよくて。やめて欲しいのに、気を抜いたらもっと、って言ってしまいそうで。

それは中学一年生の夏頃だった。僕は色恋に興味のないタイプだったけれど、周りは『お年頃』なわけで、その少しあとくらいに僕は、それが“発情”であり“快感”であることを知った。






それから僕は、素肌を晒さないようになった。

夏でも長袖を着て、どんなに仲の良い友達の前でも油断はしない。普通の人と同じように過ごすことに最善を尽くした。

なのに。


「なあなあ、なんで知念て夏でも長袖なの?」

「…肌があんまり強くないから、だよ?」


言い慣れたやりとりに、質問の主は誰かと顔を上げると、そこには山田くんが居た。

ちょっとした騒ぎになるくらい整った顔が不思議そうに歪んでいて、でもこれ暑くない?と言いながら僕のカーディガンを指先でつまみ上げた。

ひくり。

体が少し強張って、山田くんが「え、どうした?」と少し驚く。

「なんでもないよ。暑くもないし。」

山田くんと僕は、特に仲がいい訳でもない、はずだし。
これ以上のやりとりはないと、油断していたのかも知れない。



「…でもお前って、本当に肌白いのな。」



する、と、山田くんの逞しい指が僕の肌____長年他人に触れられたことの無かった肌だ____に触れた、その瞬間に。


「…っ、あ、」


ぶわあっと、顔が熱くなるのがわかった。体温もぐぐっと上がって、小さく声が漏れて、気持ち悪いのに気持ち良くて、やめて欲しいのに、

…もっと。

熱に浮かされた頭が、一瞬確かにそう思った。


目の前の山田くんは、その綺麗な顔に、今度はすごく心配そうな表情を浮かべた。


「え、ちょっと、知念…ほんとに大丈夫かって、」

「…だいじょうぶ、だから…っ、」


心配そうなまま、綺麗な顔が僕を覗き込む。

やめてよ、今そんな顔で覗き込まれたら、僕、おかしくなっちゃうから。

どきどきしちゃって、全然大丈夫なんかじゃないよ。


大丈夫じゃないから、

「はなれて…お願い…」


じゃないと本当に、僕が駄目になっちゃうよ。

そう、思ったのに。

山田くんの手が僕の首の後ろと、膝に回って、気がついたら体が宙に浮いていた。


「ちょっとお前、おかしいって。保健室連れてってやるから寝たほうがいい。」

「…大丈夫だから、やめて……」


むき出しの首筋に、山田くんの腕が回っている。

やっと収まりかけていた熱が身体中を巡って、首筋もどくどく熱くなるのが分かる。

それが山田くんにバレないように必死に祈りながら、僕は山田くんの腕の中で、熱のこもった大きな息を一つ吐いた。


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