おはなし

□ふわふわ
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「お待たせ」

そう言って、オニュ兄はテーブルにふわふわパンとカフェオレを静かに置いてはフッと笑う。
「?」
僕はなぜオニュ兄が笑ったのか分からず不思議顔でオニュ兄を見上げれば、オニュ兄は悪戯な顔をしては言った。
「テミナはまだブラックコーヒー飲めないんだよなぁって思ってさ」
そう言ってオニュ兄が悪戯に笑うのに、僕は僅かに唇を尖らせながら言った。
「ブラックコーヒー飲めないからって子供扱いするのやめてよね」
僕が唇を尖らせながら言うのに、オニュ兄はまたクスッと笑っては言った。
「別に子供扱いしてるわけじゃないけど、可愛いなって思って」
そう言ってまたフフッと笑うオニュ兄にムキになって言い返してしまいそうになったが、また子供扱いされるのが嫌で僕は黙りを決め込んだ。

正直、コーヒーなんてあまり好きじゃないし好んでは飲まないけど、オニュ兄の淹れてくれるカフェオレは美味しいと最近思えるようになった。

「とりあえずレジ閉めて、お店の片付けするから食べて待ってて」

僅かに唇を尖らせて黙りを決め込んだ僕に苦笑しながらオニュ兄は言って、お店の片付けを始めた。
そんなには広くない店内をちょこまかと忙しく動くオニュ兄の姿が何だか可愛くて、僕はさっきまでの気持ちなど忘れて知らず笑みを零した。
オニュ兄を目で追い、見つめていれば、レジを閉めながら売り上げ伝表を見つめフワッと笑みを零すオニュ兄の姿に胸がキュンとなる。

嬉しそうに目を細め、柔かそうな唇から白い歯を覗かせ笑う。

「可愛いな…」

僕は小さな声で知らずにひとり呟いていた。
そうして、呟きながらオニュ兄が特別に焼いてくれたふわふわパンをちぎっては口に運んだ。

ふわふわと柔らかくて、しっとりと唇に触れる。
中から溢れるメイプルがとろりと口の中を甘くする。

オニュ兄の唇もこんなだろうか?

僕は目を閉じ、想像しながらふわふわパンに唇を寄せた。

柔らかくてしっとりとした唇。
啄むように唇を噛めば甘い吐息にとろりと漏れる甘い蜜。

脳裏で想像するオニュ兄の姿にカッと僕の体が熱くなった。

「テミナどうしたの?」
「ふっえぇっ…!?」

どんな顔をしていたのか自分でも分からないが、オニュ兄が眉を寄せながら僕に問いかけるのに、僕は素っ頓狂な声を上げてはドキッと胸を鳴らしながら嫌な汗を滲ませた。

「な、なに?」
「いや、パン食べながら寝ちゃったのかなって…」
「あはは〜、寝てない寝てない!美味しいから味わって食べてただけ」
まさかオニュ兄の淫らな姿を想像していたなどと口が滑っても言えない。
僕は誤魔化すように派手に笑ってはパンを頬張った。
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