片目の闇医者

□目撃証言
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ある日、探偵社に市警からの依頼が来た。それは、近頃倉庫街等に出没する 闇医者についての調査だった

「闇医者…どんな人物なんでしょうか」

「さてねェ…どの道、無免許医って事には変わりない。腕のあるヤツなら、免許を取るように説得させるだけさ」

与謝野と中島は、目撃証言のあった倉庫街へ向かっている。こんな昼間に居るか分からないが、行ってみるに越したことはない

「ここだね」

倉庫街の中でも 一番使われていない古びた倉庫。開いている扉の隙間から中を覗けば、奥に小さな灯りがぽつんと浮かんでいる。警戒し乍も中へ進んで行き、目的であろう人物の影を確認すれば、更に近寄る

「あら、患者さん…?」

足音に気がついたのか、その影はゆっくりと此方を向く
その人物は、白衣を纏い 一見は普通の医者だ

「妾らは武装探偵社だよ。最近、倉庫街にいる闇医者ってのはアンタかい?」

「そうじゃないかしら?此処らで私以外に医者をしている人は聞いた事ないもの」

クスクスと笑うその人は、ブーツを鳴らし 二人の方へ近づく。小さく孤を描いた口に、細められた左目。与謝野より少し背の低いその人は、どこか不思議な雰囲気を纏っている

「あの、何故貴女は此処で医者を?」

「それも闇医者って言われてる無免許医だそうじゃないか。そんな奴は放っておく訳にはいかないンだよ」

「私としては、放っておいて欲しいわね
別にお金を取ってる訳でも無いし、簡単な手当しかしてないわよ」

彼女は悪びれた様子もなく、淡々とした口調でそう云うと、白衣の衣嚢から小さな手帳を取り出し、何かを確認するような素振りを見せた

「ごめんなさいね、この後用事があるの。話はまた今度聞かせてもらうわね」
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