D.Gray−man2

□未知なる恐怖
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「クロ……ッ?!」


クロスの部屋、開いた扉の先。

シルクは僅かに感じ取った違和感の原因を探り当てようと、室内を見回して。


「…おい馬鹿。泣くな」


──気付いてしまった。

割れた酒瓶の転がる室内。
それに混じってとぐろを巻く、血の付いた赤い包帯に。


「なん、で…クロス」


普段通りに見えるその姿からして、怪我してるのは多分服の下。

それでも包帯に付いたその出血量からして、軽傷ではないだろう事は明白で。


「ク…ロ、」


引き寄せられる体。

優しく抱きしめられれば、その分涙が溢れた。


「私のっ…せいだよね。私が…!」

「何を馬鹿な」


クロスはベットに腰を下ろし、胡座をかいたその上にシルクを座らせた。

その一部始終を見ていたコムイ達に一瞥し、片手で出て行くよう促すクロス。

それを受け、静かな開閉音を残して扉は閉ざされた。


「…中央の奴等からどうやって逃げた?」

「コムイさんたちが…助けてくれた」

「これはあいつらにやられたものか?」


滑るようにシルクの首元を撫でるクロスの手。


「…痣になってやがる」

「っ、」


シルクの透き通るように白いその肌に走る、うっすらとした鬱血痕。

隠すように顔をうずめてきたシルクの頭をクロスが優しく撫でてやると、


「あの人たちがエクソシストを保護するだなんて……嘘だよね?」


静かに紡がれる言葉。

力を持つ者を自分の手の内に置いておきたい理由。それは──


「…あぁ。だろうな」


いつの時代もきっと同じ。

自分の砦を守るため。

保護という名の、自己保安。


── そんなのもう…

嫌というほど分かってるんだ。


「クロスと出会ってっ…一緒に戦ってこうと思ったよ。強くなろうって、思ったよ」


そしてそれがこの世界を救うことにも繋がるのなら。


「弱音なんて吐かないって決めた。でもっ…!」


堪えきれずに零れた涙がまた一粒。


「…一人じゃ出来ないっ!!!クロスがいなきゃ、全部ぜんぶ出来ないことばっかなんだっ!!」

「シルク、」

「クロスと離されてでも必要とされる力なら使わないっ。酷 い…こと、されたってっ……使わないっ!!!!」


先程の一件で締められた首を思い出してか、声を震わせるシルク。

それを見たクロスはシルクのその首に優しく舌を這わせた。


「 っう、ぁ…」


経験を積んだテクで舐め上げて。

震えるシルクの体を優しく押し倒したら、


「…何だ、珍しい」


いつもはクロスに脱がされるだけで、自分からは脱ごうとしないシルクが。

恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、自身の着る服へとその手をかけていた。


「だ、だってクロス…怪我、してるから」

「自分で脱ぐのは恥ずかしいんじゃなかったのか?」

「う…」


知ってるくせに。

それを言われるだけでシルクがどんなに──


「そういえば…こういうプレイはまだしたことがなかったな」

「プ、プレイ?」

「羞恥プレイ」


聞かなくてもクロスの口元の笑みからして、それは多分あまり好ましいものではないような気がした。


「や、やっぱり服っ…!」

「ほぉー?怪我人を労る優しさもねェのか、オレの弟子は」


さっきまでの空気はどこへやら。

怪我とオレの弟子を強調しながら頬を撫で上げるクロスの指に、本能的にシルクの身に走る身震い。


「や、そっ、待って…だめっ!!」


きっと絶対また無理難題を押し付けて。

戸惑う反応を見るつもりなんだとか思ってたら案の定、


「脱げ」

「ッ」


久しぶりの行為に高鳴った一瞬の鼓動は。

その一言により未知なる恐怖へと地に落とされた。


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