「良かったシルク!!」 「?!」 ルベリエとリンクがいなくなった後。 駆け寄ってきたリナリーにより強く抱き締められたシルクは、戸惑うように小さくその身を捩った。 けれどそれにも構わずリナリーはシルクを抱く腕に力を込め、包み込むようにして自身の中に閉じ込める。 「シルク、教団に来た最初の日からほとんど何も話さないまま部屋に閉じこもっちゃって…何度か訪ねるうちに、少しずつ心を開いてくれてきたと思ったら── 今度はクロス元帥がどっかに連れてっちゃって、次はいつシルクに会えるのかと思ってたら今度はこんなっ、どこか痛いところない?他には何も…されてない?」 一息に言い切ったリナリーは心配そうにシルクの顔を覗き込むと、戸惑うシルクの瞳を正面から捉えた。 「……っ、」 その視線と目が合うも、シルクはどうしていいかわからなくて。 ── だってこんなに強く抱き締められることも、心配する言葉をかけられることも。 クロスが最初で最後。そう、思ってたから… 「痛くないわけなんてないよね…だって首に、」 「っ…!」 リナリーが伸ばしてきた手よりも先。 少しの戸惑いはまだ、あったけど── 「!! …もう何も。何も怖くないから。大丈夫だから」 「ひ っう…っ」 戸惑うようにその胸に顔を埋めたら、優しく包み込むようにして抱き締めてくれるリナリーの腕。 女の人にこんなにも優しく抱き締めてもらったのなんか、生まれて初めての事で。 ── 甘い香りと静かな心音。 それはもしかしたらこの世界に生まれ落ちる前の母の体内のものかもしれない、なんて。 「リ、ナ…」 「シルク?」 無意識からリナリーの背に回していた手に力を込めていた。 ── …あと少し、もう少し。 そしたらちゃんと、 自分の一歩で歩くから。 |