「まだ二人の行方を掴めてないなどと。一体教団は今まで何をしていたのかね?」 「ルベリエ長官…!!」 朝も早い室長室で。 その静寂を破ったのはにじみ出る不機嫌さを隠そうともしない、中央庁特別監査役マルコム=C=ルベリエだった。 ルベリエは後ろで手を組み、集まった面々に冷たい視線を向ける。 「元帥ともあろう人材を3人も向かわせたと聞いたのだが?」 「現在全力で捜索中です」 「クロス元帥は数年間も行方を眩ませてた上、ついこの間ひょっこり現れたっきりシルクを連れてあんたらから逃走してるくらいだ。簡単には見つかりっこないだろうさ」 「言葉がすぎるぞブックマンJr!!」 「いや、いい」 てっきり詰め寄ってくるかと構えたラビの気を削いだのは、意外にもルベリエ本人による制止だった。 真意を測るようにルベリエの顔を見上げるリンク。 「キミは…何かを勘違いしてるんじゃないのかね? どうやらキミは二人の肩を持ちたいように見えるが── キミが口を挟める問題など、今はもうとうに越えているのだよ」 「まさか…!」 そのルベリエの言葉に、恐れていた最悪の事が起きてしまったかのようにコムイが目を見開いた。 ルベリエはそのコムイにも冷たい視線を向け、当然だろうとばかりに口を開く。 「シルク、並びにクロス・マリアンの件については…我々も全力を尽くすこととする」 ルベリエの言うそれは、二人の確実な確保。 遂行されれば二人は── シルクは─── 「ちょっ、ちょっと待ってください長官!!!!」 「我々はもう、十分すぎるほど待ちましたよ」 待ったをかけるコムイに間髪入れずに返されるルベリエの声。 だが、コムイにしても遅かれ早かれこうなるだろうことは分かっていたはずなのだ。 「もう、十分でしょう?」 コムイはルベリエのその言葉に唇を噛み締め、グッと拳を握った。 流れるは、誰かの涙か否か── |