D.Gray−man2

□どんな薬よりも
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「媚、薬…なんて、きらいっ!」


意識が戻り、薬による熱が収まったシルクは、そう言ってクロスの腕の中で泣きそうに訴えた。

クロスはというとさすがにシルクの不注意により生まれた状況に便乗するわけにもいかず、挿れてないせいで何とも言えない。


「まぁ、オレもコイツは好きじゃねぇな」


そう言ってクロスは媚薬入りの容器を持ち上げると、はぁとため息をついた。

昨日まではシルクの反応見たさに使ってみたいとも思ったが──


「…クロス?」


口にこそ出さないものの、こんなもんなくたってオレだけで十分感じれんだろうがと舌打ちした。


「…ってナルシストかオレは」


その舌打ちに縮こまるシルクの髪を撫でつつ、クロスはもう片方の手で額を抑えた。

── どうもこいつ相手となると…冷静でいられん。


「…あ、あのねっ」

「ん?」


額を押さえるクロスの服袖を遠慮がちに引いたシルクは違うの、と首を振って。


「び、媚薬が嫌いってっ、言ったの…は、」


自分から言い出しておいて、徐々に小さくなる声量と、赤みを増していくシルクの頬。


「…や、やっぱり何でもない!!」

「あ?」


けれど、そこまで言いかけたシルクをクロスが放っておく筈もなく、俯くその顔を持ち上げた。


「言わないとどうなっても知らんぞ」

「っ!! ち、違くて…び、媚薬が嫌いって…言ったのは、」


観念したようにシルクは長い睫毛を伏せ、口を開いた。


「こ、こんな薬なんかじゃ、なくて…ちゃんと、ちゃんとクロスに濡らしてもらって欲し……んっ!」


反射的に落とした口付け。

最後まで言わなくても分かった、シルクの言葉の続き。


「やっぱり最高だよ、お前は」


シルクも自分と同じ事を思っていたのだと知ったクロスは、もう用はないとばかりに媚薬の容器をごみ箱に放ったのだった。


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