ガチャ 「…クロスっ!!!」 「あ?」 入り口前で塞ぎ込んでいた体は。 意志に相応して帰ってきたクロスにすぐさま抱き付いていた。 「目が腫れているな。泣いてたのか」 「泣いて、な…」 首を振るシルクを連れ、出掛ける前と同じようにしてベッドに降ろすクロス。 何でもないと首を振るシルクだったが、真っ赤に腫れた目元は言葉よりも雄弁で。 「待たせて悪かった。さっきのさっきだから一緒に連れてってやろうかとも思ったんだが、」 「…ひゃっ!」 クロスは震えるシルクの耳を甘噛みして優しく足を開かせると、その足の間に今しがた作ってきたばかりの薬を塗り込んだ。 「…ひっ!!な、なにっ」 「市販で売ってるやつよりも効果の高い、媚薬入りの鎮静剤だ。これを作る材料も買いに行ったりなんやらしなきゃいけなかったから、今の状態のお前を連れ回すのは気が引けてな」 「んっ、」 塗り込まれる薬と指の感覚に、小刻みに震えるシルク。 傷口を中心に塗り込んだその指を抜いたら、涙ぐむその瞳と正面から目があった。 「び、やく…って何?」 潤んだ瞳でそんな事を問われ、クロスはピシリと固まった。 「…知りたいか?」 「…や、やっぱりいいっ…!怖い…」 「遠慮はいらん。だが、さすがに今の状態のお前を見て説明するには理性がな… 知りたいんなら今度、たっぷりと時間をかけて実践で教えてやる」 開かせていたシルクの足を閉じて。 僅かに熱を持ち始めた自身を抑え、クロスはその隣へと身を引いた。 ── お礼のつもりか抱き付いてくれんのは嬉しいが、今は逆効果なんだが… 「早く治せよ」 「…うんっ!」 「ここの方もな」 「?」 クロスは抱きついているシルクの胸をトンッと人差し指で軽く突くと、そう言った。 「手伝ってやるよ。完全に完治するまで、な」 ── きっとクロスは分かってるのだ。 クロスが帰って来るまでシルクが何を考えていたのかも、帰って来た途端に抱き付いた、その理由にも。 シルクが何も、言わなくても。 「…クロスには何でも分かっちゃうんだね!」 「当たり前だ」 嬉しそうに笑うシルクの頭を撫でてやりながら、クロスもフッと微笑んだのだった。 |