D.Gray−man2

□早く帰ってきて
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「見せてみろ」


戻った先の部屋にフロワの姿はなくて。

クロスに言われるまま、シルクはゆっくりと足を開いた。


「…挿れられたか?」


その問い掛けに、シルクは激しく首を横に振って否定する。

確かめるように触れてきたクロスの指と、それにより走る痛みから、シルクは強く目を瞑った。


「いっ……!!」

「挿れてもねェのにこれか」

「っ、ぅ…」

「一時間だ」

「…?」


クロスはそう告げると、シルクに背を向けてドアの方へと向かった。


「一時間で薬作って帰ってくるから、大人しく待ってろ。誰か他のやつが訪ねてきても絶対に扉は開けるな。いいな?」


言われるままに頷いたシルクを確認し、部屋を後にするクロス。

けれども鍵の閉まる音を聞いた瞬間、シルクはどうしようもなく一人という空間を実感した。


「一時間……」


── クロスのいない一時間。

一人っきりの、一時間…


──── ッ」


一人を実感した途端に思い出した感触に、シルクは反射的にきつく足を閉じた。

触れられた太い指と、強く噛まれた軟骨。


「っひ う…」


思わず耳を抑えたら、あの時の情景がクリアに蘇ってきて…


── 『泣く前に鳴け』


自分が思ってるより体はずっと正直で。

無意識のうちにシルクはベッドに潜り込んでいた。

軋むベッドの音と重なる、あの時のスプリング音。


「ぅ、……っぁあ」


今なら取り出せるこの武器と、右目の力で。
拒絶を示せれば、どんなに良かったことか。


「クロ、ス…っ」


呟いて、伸ばした手。

けれどもその手を掴んでくれる存在も今はいなく、シルクは強くシーツを握りしめ、孤独に耐える事しか出来なかった。


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