「見せてみろ」 戻った先の部屋にフロワの姿はなくて。 クロスに言われるまま、シルクはゆっくりと足を開いた。 「…挿れられたか?」 その問い掛けに、シルクは激しく首を横に振って否定する。 確かめるように触れてきたクロスの指と、それにより走る痛みから、シルクは強く目を瞑った。 「いっ……!!」 「挿れてもねェのにこれか」 「っ、ぅ…」 「一時間だ」 「…?」 クロスはそう告げると、シルクに背を向けてドアの方へと向かった。 「一時間で薬作って帰ってくるから、大人しく待ってろ。誰か他のやつが訪ねてきても絶対に扉は開けるな。いいな?」 言われるままに頷いたシルクを確認し、部屋を後にするクロス。 けれども鍵の閉まる音を聞いた瞬間、シルクはどうしようもなく一人という空間を実感した。 「一時間……」 ── クロスのいない一時間。 一人っきりの、一時間… 「──── ッ」 一人を実感した途端に思い出した感触に、シルクは反射的にきつく足を閉じた。 触れられた太い指と、強く噛まれた軟骨。 「っひ う…」 思わず耳を抑えたら、あの時の情景がクリアに蘇ってきて… ── 『泣く前に鳴け』 自分が思ってるより体はずっと正直で。 無意識のうちにシルクはベッドに潜り込んでいた。 軋むベッドの音と重なる、あの時のスプリング音。 「ぅ、……っぁあ」 今なら取り出せるこの武器と、右目の力で。 拒絶を示せれば、どんなに良かったことか。 「クロ、ス…っ」 呟いて、伸ばした手。 けれどもその手を掴んでくれる存在も今はいなく、シルクは強くシーツを握りしめ、孤独に耐える事しか出来なかった。 |