「やめだ。ガキの相手をするほどオレも暇じゃねぇよ」 マドネスを肩に戻したソカロはそう言い捨て、二人に対して背を向けた。 「待── 」 ガシッ!! それに制止をかけようとするクロスの腰にしがみつき、首を降って止めたのはシルクだ。 「クロス…怪、我」 「あ?」 クロスの右手袋に滲む赤色を見て、シルクの顔が泣きそうに歪んだ。 「…あぁ、これか」 かすり傷だと呟くクロスに反し、恐る恐る手を伸ばしてくるシルク。 「…痛い?」 「痛くねぇよ」 「!!」 触れてきた指を軽く握り返してやったら、びっくりしたように手を引っ込められた。 ── …何だこの反応。 「何驚いてやがる」 けれどもクロスのその言葉にも何も返さないまま、シルクはただただその手をじっと見つめていた。 「気になんなら手袋取って、見てみりゃいいじゃねェか」 「こ、怖いからいいっ!!」 ── 怖いって、オレの手は恐怖の対象かよ。 が、クロスはある事を思いついて不安気にその手を持ち上げると、深刻そうな顔でポツリと呟いてみた。 「まぁ…案外深いかもな」 「えっ?!」 「何より出血量が酷い」 「そ、そんなっ…」 普通に見て、多少血が滲む程度のそれであるのだが… そっちではなくクロスの言葉の方を信じ、どうすればいい?と泣き出すシルクの前に、クロスは手袋を剥いだ手を差し出した。 「止血の仕方は分かるな?」 「わ、…わかんない」 「こうすればいい」 「 っん!」 小さく開いたその口に傷口を押し当てて。 目で訴えてくるシルクに舌だ、舌と言うと理解したのか、生暖かい感触が触れてきた。 「噛むなよ」 クロスのその言葉に暫く傷口を舐めていたシルクだったのだが、ふと何かを思い出したようにあっ!と口を開いた。 「そっか、止血の仕方ってみんな同じなんだね!!」 「あ?みんな?」 「ティキとか言う人も、怪我した手をこうして舐めるように言ってきたよ」 その言葉を聞いた瞬間、ひくりと引き攣るクロスの頬。 ── …あの泣き黒子。次会ったらマジでブチ殺す!!!! |