夢中で走って、走って走って。 見つけた先にいた、赤髪の男に。 「クロス!!」 「?!」 半壊した瓦礫の中で向う合う二つの影。 そのうちの一人が手に持った銃を上に上げ、シルクを見た。 「来るなシルク!下がってろ!!」 「ククッ。どこまで躾済みだぁ?クロス」 喉奥で笑いながらクロスを挑発するその男は── … 「…っ!!!」 見覚えのあるその顔に震え上がるシルクを見て、男の口端が釣り上がった。 卑猥な動作でシルクに向けて指を動かして。 「それとも、オレが最初から躾直してやろうか?あぁ?」 ドンッ!! 返事の変わりに放たれる一発の銃弾。 けれどもソカロの持つ双剣が、目標に届く前のそれを真っ二つに裂いた。 「…次で仕留める」 「言うねェ」 遠距離型のクロスに対し、近距離型のソカロ。 放たれるクロスの銃のホーミング機能を知ってか、ソカロは手にした双剣で真っ向からクロスへと向かって行った。 「…クロ、!!」 相討ち。なければ確実にクロスの方がダメージがデカイだろうことを理解し、飛び出すシルクの体。 そして── 「お、前…」 「っ……!!」 いつものシルクとは違う、明らかな違和感。 ソカロの攻撃を受け止めるシルクを見て── いや。そもそも本来であれば、シルクにソカロの攻撃を受け止められる程の力はない。 それなのに… 「まさか、お前」 まるで見えない壁があるかのように攻撃の瞬間を固定され、ギリギリと震えるソカロ。 「ハッ。警戒するほどの力もねェガキだと思ってたんだが…」 「っう!!…ぁッ!」 無理矢理力技で押し破って来ようとするソカロに圧され、膝をつくシルク。 それに気付いたクロスは『見えない壁』越しに銃を構え直し、ソカロの眉間へ突きつけた。 「お前が望むならオレはこのまま引金を引くぞ、シルク」 突きつけた銃の標準から、それが決して脅しなんかではないことは明白で。 「…っ!!だ、めっ…!!!」 右目はソカロから離すことなく、反対の左目でクロスを確認したシルクは、その言葉に激しく首を横に振った。 「クロスに…そんなことしてほしくなんてないっ!!!」 「…チッ」 瞳に宿る色は変えないまま、けれどもクロスは静かに銃を持つ自身の手を下におろした。 「…理解出来ねェな」 そのクロスを見て、仮面越しにそれを確認したソカロもまた、マドネスの発動を解いてその手を下ろした。 「前のクロスは、こんな腰抜けなんかじゃなかったぜぇ?」 「……っ!!!」 その言葉に反応したシルクが、左目から── 「覚醒したか…」 シルクが取り出した凶器は以前の見慣れた刃ではなく、両方に長刀の刃が付いた形状のもので。 例えるなら…そう、柄のない真剣。 切っ先から反対側の切っ先にかけてどちらも鋭いそれは、中心を軸にして円を描くように数本の切っ先を剥き出しにしていたのだった。 |