幸いにも地面からそれほど距離がなかった為と、落ちた先が芝生の上だった事からシルクは最小限の外傷だけで済んだ。 「…ッう!!!」 けれども一歩踏み出す度に痛むそこ。 太ももを伝う朱に…それでも躊躇は許されなかった。 「その格好でうろつくのはちと、刺激が強すぎやしねェか?」 完全にこの状況を楽しむようにして響く、ソカロのその声。 今にも肩を掴まれて再び組み敷かれる恐怖から、シルクは必死に走った。 背後から響く破壊音はもはや、シルクの身が傷付こうが動きを止められればそれでよしとするようなもので、シルクはあらん限りの力を総動員し、必死で逃げようと── 「無理だろ」 「…ッア!!!」 したのだが、秘部の痛みに耐え走るシルクと、体力の有り余ったソカロとの力の差は歴然だった。 シルクはあっけなく壁に押し付けられると、強く肩を掴まれてしまった。 人通りの少ないこんな狭い通りで、助けなどは期待出来ようはずもなくて。 「いっそ立ち上がれないくらい酷くされてェのか?」 「…っい! やっ!やあああッ!!!!!」 スカート下から無防備なそこを触られ、必死に体をずり上げようとするシルク。 「ガンバれガンバれ。ほら、もう一本入れちまうぞ?」 「ッ……!!っあ゛ぁ、」 けれどもずり上げられるのにも限界があり、逃れられないその痛みからシルクが涙を流して首を振るも更にソカロの指は増やされ、そして── … 「その辺にしとかないと、マリアンもただでは済ませないと思うよ」 「…あ?」 涙で滲むシルクの視界の先。 メガネをかけ、横手にスケッチブックを携える男の姿が見えた。 「邪魔するなよ、フロワ」 「…っぁあ゛あ!!!!!」 逃げたくても逃げられず、ただ背後の壁に爪を立てて耐えるしかないシルクに更なる刺激を与え、楽しむかのように鳴かせるソカロ。 それを見て眉を顰め、構えのような姿勢をとるフロワと呼ばれる男。 「その子を離しなさい」 「聞けねぇなぁ…?」 ソカロのその言葉に、フロワは懐から“何か”を取り出した。 「…ッチ!」 「っ!!」 それを見たしたソカロはシルクから指を引き抜くと、乱暴にフロワへとその体を突き飛ばした。 よろめくシルクの体を優しく受け止め、けれど一瞬たりともソカロから視線を外さないフロワ。 「…ったく。もうちょっと遊べるかと思ったのによォ」 ソカロはどこからか取り出した仮面を付けると、踵を返してその場を立ち去って行った。 「っう、ひぅ…」 「…傷付いちゃってるね。でも、マリアンなら薬を作れるはずだからね」 ソカロが完全にいなくなったのを確認したフロワは、抱き止めたシルクの太股から伝う鮮血を取り出した布で優しく拭くと、自身の羽織っているコートでシルクを包んだ。 「マリアンが泊まっている場所なら分かるから、そこまで連れて行ってあげよう」 そう言って怖がらせないようにゆっくりとシルクを抱き上げると、クロスのいる楼閣へと向かったのだった。 |