「使えないもんは仕方ねェ。しばらくの間は大人しくじっとしてるこったな」 言葉は冷たいものの、シルクの頭を撫でるクロスのその手は優しかった。 ベットにあぐらをかくクロスのその足の間に座らされるシルクだったが、何やらごつごつとした感触に腰を上げ、クロスを見た。 「…あぁ、これか」 それに気付いたようにしてクロスが取り出してくれたのは、シルクが見たこともないような大型の銃。 「そ、れ。あたしを助けてくれた時に…」 クロスが使用していた銃。 ノア相手にも、全くつけいる隙を与えなかったものだった。 「これがオレの対アクマ武器だ」 「え?」 今度はシルクが疑問に思う番だった。 「だってそれ、最初にうちと修行した時に使ってたやつじゃ…ない」 シルクの左目が負傷していた時の修行時。 クロスが使っていた銃は、これよりももっと小型のものだったはずで。 それに、それにあの時は── 「ホーミング機能?なんてのも、なかった」 「あ?力もまともに扱えなかったお前相手に、本気でやれるわけないだろうが」 …言われてみれば。 そもそもそんな機能があったんだったとしたら今頃、シルクの命はとっくの昔になくなっていたはずだった。 「クロスは、寄生型じゃないの?」 前にクロスがシルクに向けていった言葉。 『それぞれで攻撃と防御の能力…寄生型か』、と。 「オレは装備型だ。マリアは寄生型だけどな」 クロスのもう一つの戦闘力である、聖母の柩。 「そういえば……あの女の人、スタイル良い」 今更だけど、と。疑問に思った事が考えるまでもなく口をついて出てしまった。 「クロスはあの人と…ヤったりしないの?」 「はぁ?何言ってやがんだお前」 シルクの頭を撫でていた手を止め、呆れたようにシルクを見るクロス。 「マリアはどんなにいい女でも所詮は屍だ。 生身のテメェには敵わんし、生身の女でもお前しか敵わん」 ── そのクロスの言葉が嬉しくて… 抱き締めてくれる腕が嬉しくて。 やっぱり自分にはクロスしかいないのだと、シルクは笑ったのだった。 |