「さんざん心配させといて、そんな態度でいいと思ってんのか?あ?」 宿泊先へ帰還した後はベッドの隅に蹲り、一切クロスと視線を合わせようとしないシルク。 それに痺れを切らしたクロスがベットに片膝をつき、シルクの顎下に手を差し入れると、あろう事かシルクはその指に噛み付いてきた。 「お前な…」 ── 原因はあの改造アクマか。 オイルを滴らせながらクロスの元にやってきた改造アクマは、必死で事の詳細を説明した後、限界だと訴えてその身を灰へと変えたのだった。 「アクマとして壊されるより、よっぽどいい最後だったじゃねェか」 クロスのその発言にも何も言わないシルクに苛立ちを覚え、抱き上げようとしたら、 「…ん?」 抱き上げようとしたクロスの服袖を掴み、泣きそうな顔でクロスを見上げてくるシルク。 「ハ、ル…怒ってないかな」 どういう意味だと続けようとして── …理解した。 いずれはなくなる体だったとしても、自分を庇った事で死期を早まらせたのではないかと思っているシルクは、その事で“ハル”が怒ってないかどうか聞いているのだ。 「有り得ねェだろ」 …予想でしかないが。 あの改造アクマが殺人衝動に目覚めた後も尚、爆発を耐えてクロスの元にやって来たのは、きっとシルクに寄せる感情があったからこそで。 それ故設定されていた自爆セットに耐え、シルクを助ける為に必死で死期を伸ばした。 「オレがお前を助けられたのも、あいつが助けを求めにやってきたからこそだ。あいつの命だって無駄じゃなかったろうが」 クロスのその言葉に安心したのかどうか。 シルクは小さく頷いたかと思うと、躊躇いがちに抱きついてきた。 「……っ。 ありがとう、クロス」 そう呟いて首を伸ばし、何度となく覚え込まされたキスを、甘えるように数回クロスの舌を吸った後離れて微笑むシルク。 「たす、けに。…来てくれてね、」 嬉しかったんだよと笑うシルク。 その笑顔にクロスもフッと笑みを返すと、 「何度だって助けてやるよ」 そう言って笑みだけでなく、口付けも返してやったのだった |