D.Gray−man2

□助けに来た紅色
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「終わりましたか?ティキぽん?」


ティキがシルクを連れて向かったのは、先ほど一旦別れた千年公の元だった。


「効き目が薄れる前にダウンロードを完成させないといけませんからネェ」

「やっと捕まえたのかよ〜!シルクの奴!!」

「ヒッ!」


そう言ってシルクの顔を覗き込んだのは、二人組の男だ。


「イタズラしちゃ駄目ですヨッ。デビット、ジャスデロ」


二人は千年公のその言葉にはいはいと頷くも、デビットと呼ばれた方の男は突如としてシルクの髪を掴み、無理矢理上向かせた。


「…いッ…!!」

「へぇ。よく見たら結構可愛い顔してんじゃん。
前の時はあんまし顔見えなかったもんな?ジャスデロ」

「ヒヒッ」

「二人トモ」


メガネの奥の目が笑ってない千年公を見て、慌ててデビットはシルクの髪から手を離した。


「ロードの様子を見てくる間、何もしちゃ駄目ですヨ!」


千年公は二人にそう念を押すように告げると、どこかへと去って行った。その後ろ姿を目で追いつつ、首を竦めるデビット。


「……怖えぇ!そんなに大事なやつなのかよ?」

「怒られてやんの。ヒヒッ」

「うるせぇ!!」


二人の掛け合いから目を離したティキはシルクに視線を移し、呼び掛けた。


「おい」


けれどもティキのその呼びかけに反応せず、何かを考えるように俯いているシルク。


「おい!!!」

「?! …やッ!!」


ティキは無理矢理シルクの顎を掴むと、強く自分の方を向かせた。


「何を考えてる?」

「いっ、たい…っ」


抵抗の為に上げたシルクの手を逆に掴み返したティキは、嫌がるシルクの瞳を覗き込んだ。


「今、何を考えてた?」

「な、にも…考えてなんてない…っ」

「ここから逃げる方法でも考えてたか?
やっぱ力ずくで教えねェと…わかんねぇかよ?」

「……ッ!!!!!」


その左目にかざされる、ティキの大きな手。


「発動出来ない時に左目に手ェ突っ込んだらどうなるか」


蘇る痛み。

必死で振りほどこうとするシルクの抵抗をものともせず、ティキの手はシルクの左目に徐々に迫ってきて──


「それ以上そいつに触るんじゃねぇよ」


「なっ?!! クロステメェっ!!!!」


突如として現れたクロスの気配に、真っ先に気付いた双子が突進して行った。


「お前らの相手をしてる暇なんざねェ」

「ハッ!当たるかよ!!」

「ヒヒッ!」


クロスが放った銃弾から逸れ、一気に距離を詰めようとする双子。

しかし、次の瞬間その瞳は驚いたように見開かれた。


「…ッな?!」

「断罪者の弾丸はターゲットにブチ込まれるまで止まらない」

「デビッ…ッヒ?!」


助けに回ろうとしたジャスデロも巻き込まれ、二人は揃って地面に倒れ込んだ。


「クロス!! …やッ!」

「おっと」


駆け出そうとしたシルクを強く押さえ付け、クロスの前に立ちはだかるティキ。

その背中を巨大な黒い蝶達が覆った。


「何をするつもりなのかは知らんが…死にたくなかったらそこをどけ」

「あいにく、簡単にやられるほど弛い留守は頼まれてないんでね」


ティキを取り巻く無数の黒い蝶。

ざわめく羽音が空気を裂いた。


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