D.Gray−man1

□湧き上がる後悔
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「シルク……」


意識を失ったシルクの髪を優しく梳きながら。

クロスは今更ながらに自分の中を占める後悔の念から強く目を瞑った。

シルクにこういった経験がない事は事前に分かっていた事であるし、それ故シルクが痛みに泣くのも、中が狭いのも至って当たり前の事だと思った。

一夜限りの相手であれば処女だろうとなんだろうと加減なんかせず、むしろ面倒臭いと思いながら自分本位に好き勝手抱き、飽きたら飽きたで追い出せばいいだけの事。そして、クロスは今まで実際にそうしてきた。

だが── ……


「コイツはそうじゃねェだろうよ…」


煙草に火をつけながら。

微かに上下するシルクの肩を優しく抱き寄せながら。

クロスはシルクのその足の間に伝う血をシーツで丁寧に拭ってやり、労るように口付けた。

情事後の女にこんな事をしたのも、優しく抱いてやれなかった事を後悔したのも初めての事で。

だが、シルクには教団に向かった後は探しに来いと伝えてあった為、コムイやヘブラスカなどに会った既成事実を作った後は、すぐにでもシルクは自分の事を探しにくるものだと思っていた。

それなのに──


「伝え方が悪かったのは…否めねぇか」


考えるまでもなく、クロスが自分の事を探しに来いだなんて言った相手はシルクしかいなくて。

だからこそ伝え方もぶっきらぼうで、上手く伝わらなかったんだろうと思った。

だが…それでもイラついたのだ。
自分の事を探しに来ず、教団なんかに閉じこもっているシルクに。

それをこんな形でシルクにぶつけるのは大人気ないとも思うが、抑えられなかった。

初めてくらい優しく抱いてやればいいものを乱暴に扱ってしまい、それなのにコイツは最後「好きだよ」なんて言うもんだから…


「…ったく。てめぇだけ勝手に気持ち伝えて、意識失ってんじゃねェよ」


馬鹿娘と続け、けれども口調とは正反対に優しく微笑みながらクロスはシルクが寒くないよう、その体をシーツで包んでやったのだった。


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