D.Gray−man1

□黒の教団
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「とりあえず、シルクはまず先に門番のチェックを受けないとですね」

「…門番?」

「教団内に入る為の、身体検査みたいなものです。多分、師匠が前もって教団に手紙を寄越してるはずなので、大丈夫だとは思うんですけど…」


コムイさんの事だからあてにならないんですよと続けるアレンに、コムイさんって…と出かけた言葉を飲み込み、とりあえず後を付いていくシルク。

暫くすると、一行は巨大な門の前に辿り着いた。


『おかえりアレンくん。さっそくだけど、隣にいる子は誰かな?』


浮遊する黒い羽のある物体に声がけられ、シルクは驚いてアレンの服をぎゅっと握ってしまった。
それに気付き、安心させるように背を撫でてくれるアレン。


「クロス元帥の弟子のシルクです。事前に紹介状か何かが届いてませんか?」

『紹介状なんてなくても分かるよ。
彼女は僕たちがずっと探していたエクソシストだからね…』


どういう意味ですかと紡ごうとしたアレンの言葉と、一応身体検査通さしてねと言うコムイの声とが重なった。


「シルク、ちょっとこっちに来てください」


シルクはアレンに導かれるまま、辺りを警戒しつつも歩を進めた。

けれど、



「っ!!」


突如として壁から突き出た顔と対面することになったシルクは、必死に出かかった悲鳴を飲み込んだ。


「ア、アレンなに…」


「こいつアウトオオォ!!」


「は?」

「え?」

「こいつ見たこともない反応してやがるううぅ!!特に左目!!武器がしこんである!!」

「や、あの、これは対AKUMA武器で…」

「ちょっ!いい加減なこと言わないでください!!
そういって僕の時も結局誤解だったじゃないですか!!」

「今度こそほんとだよオオォ!!」


『彼女が左目に対アクマ武器を宿してることは知ってるよ。逆にそれを示す良い手がかりになったじゃないか。門番!!』


コムイの言葉に言い争っていた門番は納得がいかないながらも、しぶしぶと開門した。

早くもショックを受けたシルクに気付いたのか、アレンが優しく頭を撫でてくれる。


「大丈夫ですよ。イノセンスは悪いものじゃないですから。それに、」


アレンの右手がシルクの顔を僅かに上に向け、微笑んだ。


「両方とも綺麗な色じゃないですか」


驚いたように目を見開くシルクに再度、綺麗ですと囁いて歩きだすアレン。

いつの間にか繋いだシルクの手を引いて、


「各階への案内は後でしますから、とりあえずまずはコムイさんに──

「ご苦労様、アレンくん」

「…げっ!!」

「げってなんだい」


予想以上に早く会ってしまった人物に、アレンは反射的にシルクを後ろに庇った。
どうやらこの人物こそが、今し方話に出ていたコムイなる人物らしい。


「やだなぁアレンくん。いくら僕だってそんな、取って食ったりなんてしないよ〜」

「僕の時と一緒で何も言わないままヘブラスカの所に連れていく、なんてことだけは絶対にしないでくださいね!!!」

「ちょっ、ちょっとちょっとなんでヘブくんの事をバラしちゃうんだい?!
びっくりして泣きだすシルクくんを楽しみにしてたのに!!」

「どこまで鬼畜なんですか!!!…って、ちょ、」

「!」


一瞬空いたアレンの後ろからシルクを引き出し、ニコッと笑むコムイ。


「はじめまして、シルクくん。科学班室長のコムイ・リーです!」

「は、はじめ…まして」

「いきなりで悪いんだけど、ちょっと来てくれるかな」

「僕も行きますコムイさん!!」

「大元帥の方々に会いに行くんだから、駄目に決まってるでしょ」


反論しようとするアレンをそのままに、シルクを連れて奥へと進んでいくコムイ。

これから起こることに不安そうにアレンを振り返りながら、シルクもその後を追ったのだった。


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