「とりあえず、シルクはまず先に門番のチェックを受けないとですね」 「…門番?」 「教団内に入る為の、身体検査みたいなものです。多分、師匠が前もって教団に手紙を寄越してるはずなので、大丈夫だとは思うんですけど…」 コムイさんの事だからあてにならないんですよと続けるアレンに、コムイさんって…と出かけた言葉を飲み込み、とりあえず後を付いていくシルク。 暫くすると、一行は巨大な門の前に辿り着いた。 『おかえりアレンくん。さっそくだけど、隣にいる子は誰かな?』 浮遊する黒い羽のある物体に声がけられ、シルクは驚いてアレンの服をぎゅっと握ってしまった。 それに気付き、安心させるように背を撫でてくれるアレン。 「クロス元帥の弟子のシルクです。事前に紹介状か何かが届いてませんか?」 『紹介状なんてなくても分かるよ。 彼女は僕たちがずっと探していたエクソシストだからね…』 どういう意味ですかと紡ごうとしたアレンの言葉と、一応身体検査通さしてねと言うコムイの声とが重なった。 「シルク、ちょっとこっちに来てください」 シルクはアレンに導かれるまま、辺りを警戒しつつも歩を進めた。 けれど、 「っ!!」 突如として壁から突き出た顔と対面することになったシルクは、必死に出かかった悲鳴を飲み込んだ。 「ア、アレンなに…」 「こいつアウトオオォ!!」 「は?」 「え?」 「こいつ見たこともない反応してやがるううぅ!!特に左目!!武器がしこんである!!」 「や、あの、これは対AKUMA武器で…」 「ちょっ!いい加減なこと言わないでください!! そういって僕の時も結局誤解だったじゃないですか!!」 「今度こそほんとだよオオォ!!」 『彼女が左目に対アクマ武器を宿してることは知ってるよ。逆にそれを示す良い手がかりになったじゃないか。門番!!』 コムイの言葉に言い争っていた門番は納得がいかないながらも、しぶしぶと開門した。 早くもショックを受けたシルクに気付いたのか、アレンが優しく頭を撫でてくれる。 「大丈夫ですよ。イノセンスは悪いものじゃないですから。それに、」 アレンの右手がシルクの顔を僅かに上に向け、微笑んだ。 「両方とも綺麗な色じゃないですか」 驚いたように目を見開くシルクに再度、綺麗ですと囁いて歩きだすアレン。 いつの間にか繋いだシルクの手を引いて、 「各階への案内は後でしますから、とりあえずまずはコムイさんに── 」 「ご苦労様、アレンくん」 「…げっ!!」 「げってなんだい」 予想以上に早く会ってしまった人物に、アレンは反射的にシルクを後ろに庇った。 どうやらこの人物こそが、今し方話に出ていたコムイなる人物らしい。 「やだなぁアレンくん。いくら僕だってそんな、取って食ったりなんてしないよ〜」 「僕の時と一緒で何も言わないままヘブラスカの所に連れていく、なんてことだけは絶対にしないでくださいね!!!」 「ちょっ、ちょっとちょっとなんでヘブくんの事をバラしちゃうんだい?! びっくりして泣きだすシルクくんを楽しみにしてたのに!!」 「どこまで鬼畜なんですか!!!…って、ちょ、」 「!」 一瞬空いたアレンの後ろからシルクを引き出し、ニコッと笑むコムイ。 「はじめまして、シルクくん。科学班室長のコムイ・リーです!」 「は、はじめ…まして」 「いきなりで悪いんだけど、ちょっと来てくれるかな」 「僕も行きますコムイさん!!」 「大元帥の方々に会いに行くんだから、駄目に決まってるでしょ」 反論しようとするアレンをそのままに、シルクを連れて奥へと進んでいくコムイ。 これから起こることに不安そうにアレンを振り返りながら、シルクもその後を追ったのだった。 |