クロスから聞いた話によるとどうやらクロス達が属する“教団”とは、神の使徒として生まれたエクソシストの保護と引き換えに、アクマを倒す修業をする所らしかった。 「おい」 「わわわわわわっ!!」 一瞬緩んだシルクの防御線を突き破って侵入してくる、クロスが放った弾丸。 「くっ!!」 シルクは思考を中断して慌てて右目に意識を集中させると、新たに防御線を張り直した。 「なんだ?左目がないと攻撃は出来んのか?」 それを感じ取ったのか、攻撃の手を一旦止めて聞いてくるクロス。 「うん……」 シルク自身が気付いたのもついさっきなのだが、どうやらそのようで。 ── 改めて自分の能力は両目で一つなのだという事を知った。 「それぞれで攻撃と防御の能力…寄生型か」 クロスが呟いたそれは何の事だかわからないが、これでは修業にならないと思い、シルクは左目を覆う包帯へと手を伸ばした。 「おいっ!!」 包帯を染める朱は、少し怖くて。 けれども外したそこから引き出した刃が── 確かに存在する事を見てシルクは何よりも安堵した。 「…これで、戦える!」 「馬鹿が!!」 視界は悪いが見えないこともないし、多少の痛みならば仕方ないと耐え、シルクはクロスへ切りかかった。 ……が。呆気なく躱されて逆に銃を乱射されてしまう始末。 「でも防御線は張ってあるから…って、わっ!!」 迫り来る弾丸を慌てて避けようとしたシルクだったのだが、崩れた体制から思わず前にいるクロスに抱き付いてしまった。 「ククッ誘ってんのか?」 「誘っ…!」 その言葉に急いでクロスから離れ、刀を構えるシルク。 …一瞬でも防御線の集中を欠けば、その隙にクロスの弾丸は襲ってくるのだ。 攻撃に神経を向かせられても、防御の集中を欠いていては勝機はないのだという事。 ── りょ、両立…出来るかな。 右目と構えた刀に一点集中。 すると雰囲気の変わったシルクに気付いたのか、銃を構え直して踏み込んでくるクロス。 至近距離で放たれた銃弾はしかし、今度は防御線を破る事は出来なかった。 ── よしっ!!…いけるっ!! シルクは勝利を確信して手にする刀を振り下ろそうとして、 「…うッ!!」 「守りが手薄だぞ、馬鹿娘」 あっけなくクロスの手により首を掴まれて終了。 「やっぱり…やっぱりまだ両立はキツイのかな」 首から手を離されたシルクはペタンと地面に座り込みながら小さく呟いた。 シルクが戦意をなくしたことにより発動が解けたのか、握っていた刀は姿を消して。 「…ほー。解除と同時に武器が目に戻るのか」 「うん。 …んんっ…!!」 強制的に上げさせられた顔に、クロスの整った顔が寄せられた。 「だが、万全な状態じゃない内はまだ発動するな。傷になるだろうが」 「いっ…!」 その指が軽く左瞼に触れただけで走った激痛に思わず顔をしかめたら、クロスはそれに気付いてすぐに手を離した。 「明日は防御の訓練から始めるから、左は使うなよ」 「え?あ、わかっ…た」 素直に頷いたシルクを抱き上げると、家へ戻る道を歩き出すクロス。 落ちない為と明日からの修業を託し、シルクはクロスの服をしっかりと握ったのだった。 |