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□脳筋のくせにたまにあざといちんちくりん
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ある早朝、善法寺伊作が薬の整理をしていると勢いよく医務室の扉が開いた。

「善法寺先輩!傷薬いただけますか!」

「なずなちゃんまたどこか怪我したの?女の子なんだから暴れまわって傷痕が残るのはよくないって言ってるのに」

「暴れまわってません、食満先輩に鍛練に誘われたのでお付き合いしただけです!」

「…これは留三郎に言い聞かせないといけないな。ほら手当てするから傷見せて」

伊作は溜め息を吐きつつなずなが見せた両膝の擦り傷の手当てに取りかかった、筈なのだが。彼が薬を取ろうとしたときその持ち前の不運が発揮されだした。
薬箱へと伸ばした手がぎりぎり届かずに別の壷に当たり、中に入っていた粉状の何かが全てこぼれ出る。そこに開けっ放しだった戸から風が入ってきて粉を吹き上げる。

「へ、へ、へっくしょーい!」
「ふ、ふぃっくしょん!ふりくしょん!」

くしゃみをした拍子にまた色々なハプニングが連鎖して発生していく。なずなはこれ以上巻き込まれまいとそろそろと医務室の戸に向かい、しかし何故か後ろから伊作がふっ飛んできて。

「おい、大丈ぶぼべっ」

薬を貰うだけと言っていたはずがなかなか戻らないなずなを心配して来た食満留三郎の胸に、彼女は思いっきり頭突きしたのだった。

「けっ食満先輩っ!すみません!大丈夫ですか」

酷く加速の付いた頭突きを流石に立ったままでは受け止められなかったものの、留三郎はしっかりなずなを抱きとめた。
そしてその状況は彼女を慌てさせるには十分だった。

「ああ、お前の方は大丈夫…そうには見えないな」

「あ、わっ私べべべ別にこんなつもりじゃ…でも先輩胸板厚くて格好良いって何言ってんの自分!どう考えてもそういうこと言う場面じゃねえだろ!し、しまった、口調が…」
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