小話
□雨音。
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「はっ……ぁ、」
身体中を支配する熱から少しでも逃れたくて、私は思わず目の前の窓ガラスに手を付いた。
ポタポタと雫の伝うガラスは思った通りひんやりとしていて、背後から与えられる熱によって浮かされた頭を、ほんの少しだけ現実へと呼び戻す。
雨は好きだ。
余程の事が無い限り、部屋でずっと恋人を独占していられるから。
「っ、ぅ……」
「考え事か?随分余裕だなッ」
「あァ……ッ!!」
問いかけながら、後ろから強く一突きされて、私はたまらずあられもない声をあげてしまった。
その後もゆるゆると腰を使われながら追い詰められて、今にも果ててしまいそうになるのを耐えながら後ろを見やると、すかさず唇を奪われる。
「……っふ、ぅ」
吐息が触れ合う距離で見つめあえば、自分とは違う色の瞳が優しく細められたのを見て、愛しさが込み上げてきた。
(私、ダリルの事がこんなに──……)
言葉では言い表せない感情がもどかしくて、せめてもっとダリルの熱を感じていたいと思った私は、自らも腰を揺らす。
「……くッ!!」
「あっ、ぁ……!!」
窓を叩く雨粒と、私達の息遣い。
どちらも酷く心地好くて、いつまでもいつまでも耳にしていたいと願った。
「出すぞ……ッ」
「んっ、あぁッ!!」
ほぼ同時に果てた身体が震えると、私はそのままベッドに崩れ落ちた。
それでも──……。
「ダリル……もっと……」
息も絶え絶えに呟けば、力強い腕に抱き寄せられる。
「どうなっても知らねぇぞ」
そう言いつつも、ダリルは嬉しそうだ。
「……いいの」
だって、こんな雨の日。
次はいつくるかわからない。
だから、もう少しだけ。
もう少しだけでいいから……。
雨よ、どうか止まないでいて。
END.