小話
□愛してるよりも、更に。
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彼の事を好きになって、
どれくらい経つだろう。
悪ぶっているくせに優しくて、
他人を寄せ付けない風を装いながらも、
人から頼られるとほっとけない。
強面だけど情に厚いし、意外と涙脆い所もある彼は……誰よりも人間らしいと言えるだろう。
ニヤッと笑いながらタチの悪い冗談を言うとこも、ボウガン越しに獲物を見つめる鋭い視線も…………何もかもが愛おしくて、胸がいっぱいになる。
ねぇ、この想いに気付いて……。
「ダリル」
「なんだよ」
振り向いた彼が笑う。
私の胸は、切なさに締め付けられる。
いつだったか、『言葉は無力だ』と言っていた仲間を思い出す。
今になって、
その言葉の意味が痛い程よくわかる。
『好き』なんて言葉じゃ足りない。
自分の胸にしまっておくのも難しいくらい大きくなったこの気持ちを、現す言葉が見つからない……。
「ダリル、愛してる」
「…………知ってる」
抱き寄せられた彼の胸に頬をピッタリとくっつけながら、私は思う。
この膨らみすぎた
想いにぴったりの言葉が見つからなくて、今思い付くどんな言葉を並べても、きっと足りない。
この狂おしいまでの感情は、
『愛してる』何個分なのだろう……?
「何悩んでやがる」
ダリルが私の顔を上向かせた。
青い瞳に映る自分は、熱に浮かされたような顔をしている。
「ダリルが好きすぎて、言葉に出来ない……」
考えるより先にポロッと出た言葉に、ダリルが笑った。
「なら、言葉以外の伝え方を教えてやるよ」
直後、後ろに押し倒された私は、
彼の情熱的な行為にまた言葉にならない想いを増したのだった。
END