小話

□彼シャツならぬ……。
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朝。
窓から差し込んで来た光に身じろぐと、背後に暖かい体温を感じた。


そっと振り向くと、ダリルがすやすやと寝息を立てている。

そういえば昨日は一緒に寝たんだっけ、なんて思いながら身を起こすと、一矢纏わぬ互いの姿に気恥ずかしさを感じた。


何度同じように朝を迎えても、この瞬間恥じらってしまうのは変わらない。

私は、まだベッドで微睡んでいたい誘惑と戦いながら、ダリルを起こさないようにしてベッドから抜け出した。


「ぁ…………」



床に散らばった衣服を回収しながら、ふとダリルのベストが目に入る。

彼が数年愛用してきたそれは、所々擦り切れ……色褪せてはいるが、それが逆に古着らしい良さを醸し出していた。


背中の翼は、最早ダリルに無くてはならないトレードマーク。
いつだって私は、この翼を目で追っている。

みんなの前を颯爽と駆けていくダリルに、翼はとてもよく似合うと思う。





そっと、自分の腕を通してみた。
瞬間、ふわっとダリルの香りがして心臓が高鳴る。
目を閉じれば、ダリルに抱きしめられているような気さえしてきた。


しかし…………




「やっぱりね」



鏡に映る自分の姿に苦笑する。
私が着るとベストはかなりブカブカで、腰の当たりまできてしまうので、なんだかカッコ悪い。


そうしていると、目を覚ましたらしいダリルが目を擦りながら私を訝しむように見つめてきた。



「…………何してやがる」

「んー……彼シャツ的な?」

「は…………?」



意味がわからないらしいダリルが首を傾げる。
その様子がなんだか可愛らしくて、こんな無防備な彼を見られる事がかなり嬉しい。



「ねぇー……今日だけコレかりちゃダメ?」

「ふざけんな、コレは俺のお気に入りだ」

「ケチ」

「んだと、コラ」


ぼそっと呟いた言葉はしっかりダリルの耳に届いたらしく、ベッドから起き出したダリルに腕を勢いよく引っ張られた。


「ちょ……っ!?」


抗議する間もなく、私の体はベッドに腰掛けるダリルの上に乗り上げてしまった。




「なぁ……もっといいものやるから、それは脱げよ」

「……もっといいもの?」

「おまえ
が好きなものだよ」


ダリルの顔が迫ってきて、唇が重ねられる。
大きな手に頬を包まれて、啄むようにキスを交わしながら……二人してベッドに倒れ込んだ。



「ねぇ、この後アーロンと出かけるんじゃ無かった?」

「少しくらい待たせても平気だろ」




END

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