長編

□09.行方知れず。
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あれから二日が経った。



私達はアトランタを出て、フォートべニングを目指している。
かなり長い道のりだ。
正直、不安しか無い。

でも、もうアトランタには何も見出すものが無いと悟った私達は、ひたすらハイウェイを進み続けた。


途中、燃料を少しでも節約する為に車を二台に減らして、ダリルは今まで乗っていた車から燃料を抜くと荷台に積んでいたバイクに乗り換える。


残った車はデールのキャンピングカーと、リックの家族達の車。
どちらも人でギチギチだ。


そうなってしまうと…………



(まぁ、こうなるよね)




当然のように、私はダリルの後ろに乗せてもらう流れになる。

何でよりによって今?と思わずには居られない。
そう──……確かに、以前なら抵抗なく乗れたと思う。
でも今は、少し気まずい状況。









『おまえが、好きだ』









ダリルに気持ちを打ち明けられてから……今日まで、どんな顔をしてダリルを見たらいいのかわからなかった。
CDCから脱出する時はとにかく無我夢中で、意識
するヒマなんて無かったけれど……ここまで来る道中、車内でずっと二人きりで居るのはそれはもうしんどかった。


悪いのはダリルじゃない。
問題は私にある。



(結局、アテにしちゃったし)




CDCでの自分の行動に、私は自己嫌悪に陥っていた。



自分がダリルの側に居るのは、喩えそれが無意識だっとしても……自分の身を守ろうとしての事では無いのかと、ダリルを都合良く利用しているのではと……疑問を抱いたばかりなのに。


自分がダリルに感じている気持ちが恋なのかどうかもわからないまま──……私はまた彼に支えられていた。





(『すりこみ』みたい……)




鳥は初めて見たものを親だと認識する。


私も、初めてダリルに会った時、漠然と──……この人と一緒なら『大丈夫』と思えた。



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