長編
□08.いつか訪れる最期まで。
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『汚染除去』。
私はその言葉の意味をずっと考えていた。
この施設を維持する為の燃料がゼロになったら起こる現象で、それがいつ起こるのかを知らせるカウントダウンは今も続いている。
まるで映画かゲームだ。
ただ……シナリオ中この手の表現がある場合、だいたい主人公達は過酷な状況での脱出を余儀なくされるわけだが…………もしかして、私達も?
そのような状況に追い込まれるとしたら、それは何が起こった場合か。
頭に浮かんだ二文字に私は身震いして、そんなはずはないと頭を振って自分を誤魔化そうとするも、心臓はバクバクと嫌な鼓動のまま。
「なんか、今日の名無しさんは変」
「え?」
隣から響いた声に、私は意識を思考の奥深くから浮上させ、ソフィアに目をやった。
彼女は怪訝な表情で私を見つめる。
まだあどけない少女がそんな顔をしても、深刻さを感じるより先に『これはこれで可愛い』だなんて、バカな事を思った。
「別にいつも通りだと思うけど?」
「嘘よ。だって、考え事ばかりしているし……いつもならダリルと一緒に居る
でしょ?」
「うっ……」
そうなのだ。
実を言うと私は今、自室ではなくキャロルとソフィアの部屋にお邪魔している。
こんな時に部屋で一人で居るのは心細いし、かといって今ダリルを頼る程、私は図々しくはない。
リック達と一緒に燃料を確認しに行こうとも思ったけれど……メンバーにシェーンが居るのを見てやめた。
「ダリルとケンカしたの……?」
「大丈夫。ケンカじゃないよ」
(ていうか……)
告白の返事を考えるどころでは無くなってしまった。
どうしたものかと再び思考を巡らせると、ソフィアが心配そうに私の顔を覗き込む。
「大丈夫だから……ね?」
安心させるように、いい子いい子と頭を撫でると、ソフィアは心地好さそうに目を細めた。
「…………?」
暫くそうしていると、私はふと違和感に気付く。
「キャロル、エアコン止めたの?」
「いいえ、私は何もしてないわ」
今まで室内は快適な温度に保たれていたのに、突然部屋を巡る風がピタリと止んでしまった。
私は立ち上がり、キャロルと一緒に原因は何かと部屋をキョロキョロと見回す。
エアコンの電源を確認しようとリモコンを手にしようとすると……部屋の明かりまでもが消えた。
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