長編
□04.アンラッキーデイ。
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目が覚めると、もうダリルの姿は無かった。
身体があちこち痛む。
酷い筋肉痛に、朝から凄まじい疲労感。
どうりで寝坊してしまったわけだ。
本当なら、ダリルが見張りに立つ番になったら一緒に出ようと思っていたのに……。
私の身体には、しっかりとブランケットが掛けられていた。
きっと、ダリルが掛けてくれたのだろう。
ブランケットに顔を埋めると、微かにダリルの香りがして……ここから抜け出すのが惜しく感じた。
外の世界よりも、きっと今はこのブランケットに包まれている方が幸せだ。
いっそここでずっと、眠っていたい。
「………………」
そんな事、出来るはずが無いのだけれど。
私は一つ伸びをして、仕方無くこの居心地の良い空間を後にした。
「…………っ」
テントから出た瞬間、漂う死臭に鼻をツンと刺激され、早くも心が折れそうになった。
青空の下に不釣り合いな死体の山。
ウォーカーに混じって、昨日まで普通に生活をしていた仲間達の亡骸も目に入る。
足元に気を付けながらリック達の所に行くと、ローリが隣をあ
けてくれた。
「ごめん、寝坊しちゃった……」
「昨日あれだけの事があったんだ。無理もない」
ローリの隣に座った私を、リックが労ってくれる。
シェーンも側に居たけれど、そちらは敢えて見ずに……私はみんなと同じように、キャンピングカーの傍らに視線をやった。
アンドレアはまだ、エイミーのもとを離れない。
ローリに聞けば、一晩中そうしていたようで……その顔からは遠目にも、疲労と憔悴の色が見てとれる。
みんな、彼女を心配そうに見つめていた。
私も、アンドレアに何て声をかけてあげたらいいのかがわからなくて、ただ見守ることしか出来ず、そんな自分が情けない。
でも、このままではエイミーは遅かれ早かれウォーカーになってしまう。
見兼ねたリックがアンドレアに話をしに行くと、銃を突き付けられ追い返されてしまった。
まるでエイミーの亡骸を守るように、アンドレアは頑なにその場から動かず、彼女の気持ちを考えると、誰も何も出来なかった。
「何見てんだよ」
そんな私達のもとに、ダリルがやってくる。
誰も手を打
とうとしないのがじれったいらしく、少しイライラしているようだ。
「みんなやられちまうぞ。あいつは時限爆弾だ」
「ダリル、そんな言い方しないで……」
「どうしろっていうんだ」
私とリックが宥めようとしても、ダリルは納得が出来ないようで…………
「銃で撃つんだよ。脳天に一発ぶち込め!俺ならここからでも十分狙える!!」
私達の反論は認めないとでも言うように、一気にまくし立てた。
「ダメよ!そっとしておいてあげて……」
「ローリの言う通りだよ、ダリル。アンドレアにはまだ、気持ちの整理をつける時間が必要なんだと思う」
かといって、ずっと待ってもいられないのだが。
ダリルの言うことも正しい。
だけど、そんな簡単に割り切れるような事じゃない。
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