長編

□19.シスター。
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心が軋む、音がする──……。







私達は、
あと何回、
こんな思いをすればいいのだろうか──…………。


















「見るな……見るなよ」




つい数日前まで自分の愛した娘だった存在が地面に崩れ落ちるのを見るのは、どんな気分なんだろう。


たった数ヵ月しか一緒に過ごしていない私ですらこんなに辛いのに……。



ダリルがキャロルを宥めるのが聞こえてきたけれど、今となってはどんな言葉も彼女には何の慰めにもならないと思えた。


みんなが言葉を失い、『誰か』……或いは『何か』がこの状況を救ってはくれないかと周囲に視線を巡らせたけれど、何もかもが手遅れだった。


希望は絶たれた。




そのことを痛感したキャロルは、ダリルの腕を振り払うと振り返りもせずに走り去ってしまう。


キャロルの背中が小さくなっていくのをやるせない気持ちで見つめていると、ベスが泣きながら死体の方へと歩いて行く。

途中、リックが制止するのも聞かずに、彼女はある死体の前で膝をつくと……震える声で『ママ』と呟いた。





「ベス……」





思わず声をかけたが、やはり何と声をかけたらいいのかわ
からず……私は結局黙り込むことになる。



その瞬間、







「きゃあああぁぁあっ!!!!」





ベスが悲鳴をあげた。



彼女の母親だったそれはまだ息絶えていなかったようで、すぐそばにある肉を求めてベスに掴みかかる。



「大変!」

「手をかせ!!」


みんなが一斉に動き出した。

私も力の入らない足で何とか立ち上がると、ベスとウォーカーを引き離す。


シェーンやリックがベスの身体を引っ張り、私はグレンと共にウォーカーの方を引っ張った。

すぐにTドッグが脇から身体を割り込ませるようにして、そのままウォーカーの頭を踏み付ける。
暫く呻き声は続いていたが、アンドレアが農具を使ってウォーカーの頭を貫き、事なきを得た。




「ベス、もう大丈夫。大丈夫だから……」



ハーシェルの腕の中で泣きじゃくるベスに、もうこれ以上悪いことは起こらないと伝えたい。


だけど、今まさに目の前で希望を打ち砕かれた私達は何を信じればいいのか……もう、わからなくて。


私は『大丈夫』という薄っぺらい言葉を繰り返した。



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