<銀色と白狼>

□1話
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…い

…おい…

おい、コラ…!


『ミハイルウウウウ!!テメー、俺のイチゴ大福食っただろ!寝たふりしてんじゃねェーー!』

「げぶァ!!?!」


俺様のスウィーツを横取りしておきながら、
尚もソファで寝たふりをしているクソアマに飛び蹴りを食らわす。


派手な音を立て目の前の引戸に突っ込んだそいつに唾を吐き掛けてやるが、
食べ物の怒りはこれぐらいじゃ微塵も治まらねェ


「いてて…寝ている相手にドロップキックとは、何のつもりだ」

『だーかーらァ、俺のイチゴ大福だよ!冷蔵庫にコンビニの袋ごと入ってただろ!
なんで朝起きたらご丁寧にゴミ箱へぶち込まれてんの?証拠隠滅のつもりかコノヤロー!』


渾身の飛び蹴りを食らったにも関わらず
頭を掻きながらケロっとした顔で起き上がるのは
俺と共に「万事屋銀ちゃん」を営んでいるミハイルだ。
反省の色もなく「扉が外れてしまったではないか」なんてほざきながら床に転がった引戸を直そうとしている。


『オイ、扉なんてどーでもいいんだよ、こっちこいこっち。そっち座れや』

「昼間から騒がしいな」

『誰のせいだと思ってんだ…?』


あまりにも白々しい返答に神経を逆撫でられ、
自分でも額に青筋が浮かんでいるのがわかる。
俺が正気で会話ができる内に話を付けたほうが良さそうだ。

ワナワナと震える俺を横目で見ながら
ミハイルは向かいのソファにどっかと座った。


『んで、聞くまでもないけどあなたは銀さんのだーいじなだーーいじなイチゴ大福を食べましたね?』

「食ったぞ」

『即答かよ!少しは白切れよ!!
っつーか人様のモン勝手に食っといて何その「食べましたけど、何か?」みたいな顔!』

「我が家の冷蔵庫に食物が入っていたのだ、それなら誰のものであろうと食すのが当然だろう?
冷蔵庫に入っていたならそれは全て私の物とも言えよう」

『悪代官かテメーはァァ!!?』


俺の怒号を皮切りに"いつも通り"取っ組み合いの喧嘩が始まる。
大体はこの通り食いモンのことが元凶だがな。





「というかお前もこの間私のイチゴミニパフェ食っただろう!」

『っあ……え、と。あれはその…』

「…これからお前がデザートを冷蔵庫に入れる度即食いしてやるからな」

『すんません、それは勘弁してください』
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