刻に抗いしモノ

□妖しくて怖い
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誤魔化す様にそっぽ向いて



何でもないと言えば彼は安心した表情でよかったと呟いている



 「取り敢えず腹減ってるだろ?飯丁度できたし食おうぜ」



 「有難う」


お礼を言って立ち上がろうとした


 「あ・・・」


ふらっ、と立ちくらみを引き起こした


 「おっと」


倒れそうになった私を彼は受け止めてくれた



 「あ、ありがと」


 「よっと」


 「へ、ちょ、ちょっと!」



お礼を言うや否や彼は私を抱き上げる



 「歩けるから!」


 「ふらふらな奴に歩かせるかよ」


彼は私を抱き上げたまま歩き始めた


嗚呼、この腕の暖かさは追ってから逃げてるときに感じた


暖かい



 「ほら、着いたぜお姫さん?」



その暖かさが離れてしまうことに寂しく感じて


つい


彼の服の裾を引っ張ってしまった



 「どうした?」



彼は優しい目で私を見てくれる


素直に寂しいと思ったなんて言えない



 「名前、教えて」


と、無理やり誤魔化した



 「黒尾鉄朗。お前は?」


 「No.109雅狼」


 「ナンバー?何だそれ」


 「秘密」











彼と一緒に居たいという思いと


彼を巻き込んではダメだという思いが



せめぎ合っていて



それに



私は、葦牙をもってはいけない



そう言う運命なんだ
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