DQW本編(短編・SS)

□Vocation
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翌日。
「クリフト、学長がお呼びだ」
学長?年に数回しか見ないあの学長が?
やや緊張しながら学長室へ向かう。もちろんここへ来るのは初めてだ。
「失礼いたします」
「おお、待っておったぞ」
学長に促され、私は立派なソファーに腰掛けた。
「時に、サントハイム城の件だがな」
やはりそれか。
「サントハイム城の神官登用、そして試験や資格のことを考えてはおるか」
「・・はい。まだ決めてはおりませんが、故郷へ戻るというのは、選択肢としては外せないかとは思いまして」
「うむ。ならば好都合。城へ行く気はない、全く考えておらんと言われたらどうしようかと思っておったのだ」
学長はやや表情を緩めた。
「ブライ殿からの推挙の件は聞いておるだろう。実は、他にも推挙人がいるのだ」
「それは、どなたでしょうか?」
「サントハイム城教会の司祭殿、そして」
学長は咳払いをした。
「サントハイム国王陛下」
「なっ・・」
私は耳を疑った。王様が?私を??
「信じられない、という顔だな。嘘などついてはおらん。ここに推挙の書状もある。おぬしさえよければ、早速手続きに入らせてもらうが」
「・・しかし、何故私ごときが」
「ごとき、は無いだろう。謙遜も行き過ぎると嫌味にしか聞こえぬ」
私は混乱していた。昔、ブライさまはメダパニなる撹乱呪文を使えたと言っていたが、あの爺さん、どこかに潜んでるんじゃないだろうか。
「これだけの推挙があるのだ。もしサントハイム城の神官になるというのなら、試験なしでの採用だそうだ。もちろん城仕えの資格は取ってもらうが、おぬしには容易いことだろう。どうだ。かなり優遇されておるが」
「え・・・試験、なし?」
「事実上の命令だよ。司祭どのと陛下のな。断る理由もあるまい」
「はい・・ありがとう、ございます・・・」
「よし、それでは手続きに入る。後日書類を提出してもらう。詳細は担任より伝える」
そして私の進路はあっさりと決まった。
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