DQW本編(短編・SS)

□Bridge over troubled water
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絶望。
この言葉がこれ以上似合う状況はないだろう。

「サントハイム」が

消えた。



とりあえず我々はサランの街へと来た。
大聖堂の一室を借りて、話し合う。司教でもある叔父のクラウスが言うには、特段変わった様子はなく、少し不穏な空気が漂っていただけだったという。
悲鳴も何も聞こえず、静寂であったと。
「本当にそれだけじゃったのか、クラウス」
「はい。先ほどクリフトから聞いて・・はじめて知りました」
「おぬしほどの者でも、何も察知はできなんだということか」
「・・面目無い」
「しかしブライさま、悲鳴も何も聞こえず、ということは・・」
「そうじゃな、消された、か」
「そんな・・!」
姫さまの顔が蒼白になる。
「あるいは、異空間へ飛ばされたか。何れにしても、ヒトの仕業ではあるまいて」
サントハイム城には、王をはじめ、大臣などの重鎮や政務官、衛兵、女官や侍女、料理番やお抱えの職人たちなど、数百人が働いている。その人々があっという間にいなくなってしまった。
サランの宿舎にいた、いわゆる「非番」の人々に聞いても、何も心当たりはないという。
「お父さまの声が出なくなったのも何か関係はあるのかしら・・」
「でしょうな。王は何かを察知しておったようじゃな」
沈黙ばかりが流れる。
しばらく後、その沈黙を破るように姫さまは言った。
「ここでずっと考えてたって埒があかないわ。まだ旅は続けるわよ。お城のみんなを探すためのね」
姫さまは強く前を見据えて言った。
「爺、クリフト。ついてきてくれるかしら」
「うむ、当然じゃ」
「このクリフト、命尽きようと、必ずサントハイムを取り戻すまでお供いたします」
「それじゃ、どのように行くべきか、計画を立てなければね。クリフト、地図あるかしら」
「はい、こちらに」
そして我々は今後の旅程の計画を立てていた。
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