DQW本編(短編・SS)

□Happy little boozer
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明日は休息日。
エンドールの酒場で、みんなでまったりとお酒を飲んでいた。
エンドールでは18歳から飲酒が認められる。ライアンが加わり、ソロとアリーナも今月でそろって18歳を迎えたため、ちょっとしたパーティといったところだ。
「姫さまはお酒は初めてですからね、気をつけていただかないと」
クリフトは兄代わりとして忠告する。
「そうじゃな。国王陛下は酒はお好きじゃが、王妃さまはほとんど飲まれなんだ。どちらに似ておるか、まだ未知数じゃからな」
ブライも釘をさす。
「ソロはどうなのかしらね?」
マーニャが楽しげに聞いた
「んー・・俺のいた村ではあまり年齢関係なかったからなあ。俺は強くも弱くもないよ」
「それより、クリフトさんはお酒いいんですか?神職の方はあまりよろしくないのでは?」
トルネコが尋ねた。
「国にもよりますし宗派にもよるのですが、サントハイム国教会では神職の飲酒は禁止されてはおりません。自我を失くすほど飲むのは論外ですが」
「あら、そうなのね。じゃあ、いけるクチ?」
「どうでしょうか。そこまで酔うほど飲んだことがないものですから。ソロさん同様、強くも弱くもないと思いますよ」
「クリフトの!ちょっといいとこ見てみたい!」
「ソロさんやめてください」
「そうそう、無理に飲ませてもいいことなんかないわよ〜。あ、すみませーん、ビールお代わり!」
「マーニャさんはその細い体のどこに入っていくんですか・・」
その横で、静かにじっくりライアンが飲んでいる。静かで、別段変わったことはないのだが・・
「ちょっと・・ライアン、どんだけ飲んだの?」
かなりの量いっているようだ。
「これぐらいは大したことはない。バトランドの兵士はこんなもんだ」
「さすが北国バトランド。どんだけよ・・」
全員で酒場で過ごすことは初めてのため、賑やかに、そして楽しく時間は過ぎていった。

が。

「ねーねーくりふとーなんかほわほわしてるねーあはははは」
「! 姫さま、いつの間に?」
「結構量いってないか?」
葡萄酒の瓶がそれなりの量空いていた。
「下戸ではなさそうだけど、一線超えたらまずいタイプね・・」
周囲のそんな声にもお構いなく、アリーナはクリフトにちょっかいを出しはじめた。
「くりふとかみのけさらさらーおはだすべすべー」
「ちょっと?姫さま??」
「うふふふー」
とうとうべったりくっついてしまった。
「役得じゃん神官さま?」
「ソロさんはだまってて下さい」
クリフトは表情を変えない。
「そろそろやめどきじゃろ。クリフト、おぬしも酒量が過ぎぬうちに切り上げた方がいいのではないかの」
「そうですね、そうしましょう」
ブライの指図により、ここでクリフトとアリーナは中座することとした。
「姫さま、今日はもう終わりですよ。お部屋までお送りしますから」
「えーやだーまだいたいのー」
「ダメです。さ、行きましょう」
「私もご一緒しますわ」
「すみません、ミネアさん」

そして二階の宿泊フロアへと向かい、ミネアに女性部屋の鍵を開けてもらった。
今日は女性は3人部屋。男性はくじ引きの結果、ライアンが個室、ソロとクリフト、ブライとトルネコがそれぞれ二人部屋だ。
「すみません、女性の部屋に入ってしまって」
「いいえ、構いませんよ」
「さ、姫さま、もう寝ますよ。おやすみなさい」
「やだー」
「姫さま!」
「くりふともいっしょにねるのー」
「・・はい?」
「いっしょにねよー?じゃなきゃねないー」
「何をおっしゃってるんですか。ダメなものはダメです」
「まえはいっしょにねたもーん」
「いつの話ですか・・」
「ねーくりふとー」
いくら諌めても聞かない。アリーナはクリフトの袖を引っ張ったままだ。
「・・わかりました。姫さまが寝るまでここにいますから。ミネアさんすみません、鍵は後でお返ししますから、ちょっと貸していただけないですか?」
「もちろん、いいですわ」
見るとミネアは笑いをこらえている。
クリフトは一旦外に出て、アリーナが寝間着に着替えるのを待った。
「じゃあアリーナ、また後でね」
「はーいおやすみー」
ミネアと交代する形で、クリフトは部屋へと入った。
おそらく、ミネアさんはみなさんにこの顛末を話すだろう。ソロさんやマーニャさんに揶揄われる覚悟はしておこう。クリフトはため息をついた。
「さ、姫さま、これをお飲みください」
クリフトは懐から紙に包まれた薬を出した。念のために持ってきておいて良かった。
「えーなにこれー」
「二日酔い防止の薬です。念のためにお飲みください」
「えー」
「姫さま」
怒気を含んだクリフトの声に、アリーナは渋々薬を飲んだ。
「にっがーい!まっずーい!」
「良薬口に苦しといいます」
「くりふとのいじわるー」
「何とでもおっしゃってください。さ、寝ますよ」
「むー」
そしてアリーナは布団に入った。
「くりふともいっしょにはいるのー」
「ダメです」
「けちー」
「ケチでも何でも結構。しばらくはここにおりますので」
「んー・・」

そしてしばらく後、アリーナはおとなしくなった。寝息を立て始めたようだ。
まったく、人の気も知らないで。
クリフトは小さくため息をついた。
「一緒の布団に入ったら、どうなるか分かりませんよ?」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で囁き、クリフトはアリーナの手をとった。
「おやすみ、アリーナ」
そしてクリフトはアリーナの手と額にキスを落とした。
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