パトレイバー小説

□TRICK
1ページ/1ページ

「あーすま♪」
「ん?」
「TRICK or TREAT!」
「無駄に発音いいな」
「いいじゃん。TRICK or TREAT!」
「んー……じゃ、はい」
「あ、本当にお菓子くれるんだ。……って、これあたしが買ってきてたチョコじゃないか!まだあったはずなのになくなってて、いつの間にか食べちゃったのかって思ってたやつ!」
「いいじゃんか、野明が俺にくれたってことにして、それでおあいこだろ?」
「何わけのわかんないこと言ってるんだよ!これはもらったって言わない!返してもらっただけ!」
「返して『もらった』んじゃねーか」
「小学生か!ダメダメ!さ、TRICK or TREAT!!」
「んー……帰りにたい焼きおごっちゃる」
「む」
「なんだよ、不満なのかよ」
「……今すぐ出さないとイタズラするぞ」
「今すぐかよ!っていうか、イタズラしたいのか?その口ぶりだと」
「……別にそういうわけでもないけどさ」
「ふうん。ま、残念ながら今の俺にお前を満足させるような菓子はない。あとはお前の好きにしろ。自分でそこまでハードルあげたんならな。期待しとく」
「むー。遊馬って意地悪だ」
「何を今さら。そういやお前茶坊主だろ」
「おお、そうだった」
「早く行ってこいよ。濃いめな」
「はーい」

「なんじゃこりゃ!?」
「どしたの遊馬」
「おい、この字、お前だよな?」
「何が?」
「俺のマグカップに『あすま』なんて書きやがって」
「持ち物に名前書くのって基本じゃないか」
「お前なあ、俺これ気に入ってんだぞ……うああ、お前これ普通の油性ペンじゃねーだろ」
「だーって普通の油性ペンじゃ簡単に落ちちゃうじゃないか」
「何で書いた?」
「シゲさんから拝借した塗料」
「うわ、しばらく落ちねーやつじゃねーか」
「大丈夫、ベンジンで落ちるよ」
「マグカップにベンジンかよ!」
「へへん。お菓子くれなかったもんね」
「たい焼きおごるっつっただろ!」
「それはそれ、これはこれ」
「だーもう!よし、野明! TRICK or TREAT!」
「え?」
「TRICK or TREAT! さっきのチョコは無効な!」
「ええ?何言ってんのさ!ていうか顔近い!」
「くれないとイタズラするぞお。くれてもイタズラするけどな」
「ひゃあああああ!!」

「コーヒーお待たせしましたあ」
「泉ぃ、遅かったじゃないか」
「あはは、ごめんごめん」
「どうしたんですか?顔赤いですよ?」
「風邪でも引いた?最近冷えるから、気をつけなさいね」
「あはは、すみません、風邪は大丈夫です、あははは」
「あれ?遊馬さんも顔赤くないですか?」
「……何でもねーよ」


おまけ。
「しのぶさん?」
「なに?」
「トリックオアトリート」
「は?」
「いや、今日さ」
「ああ、はい」
「あ、くれるんだ……って、これ」
「なんだかんだで声使うでしょ?それに後藤さんタバコ最近増えてるから、余計喉に悪いわ」
「……って、嬉しいけど、これ、確かに飴だけど、お菓子かなあ……」
「声が枯れそうな時にはいいわよ」
「うん、わかるけど、これ医薬品じゃない」
「いいじゃない。役に立ててよ」
「うん、……ありがと」



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ