パトレイバー小説

□LOVE BEER
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時は夏真っ盛り。

電算室のクーラーの調子がおかしい。整備班の人に見てもらって多少はマシになったものの、きちんと治るのは明日以降になりそうだとか。
よってクソ暑い。
今日は出動もなく、溜まった書類やデータ処理を片付けている。
おそらくこのまま定時で終わる。と思う。
そして明日は待ちに待った非番だ。

やることがないのか、このクソ暑い電算室に野明は俺のデータ処理の見物に来てた。見て欲しいデータがあったら呼ぶからと言ったんだが、それでもここで見ていると。物好きなこった。
そんな野明に切り出してみた。
「なあ、野明」
「なーにー?」
返事にやる気がない。ま、この暑さじゃ気持ちはわかるがな。
「お前今晩このまま帰る?」
「えー?なんかご用なのー?」
やっぱりやる気がない。
「ビール飲みたくね?」
「んー、飲みたいねえ」
「行かね?ビアガーデン」
「お。いいねー。おごってくれるの?」
「……そこは、すまん」
「だよねー。分かってますって」
ちょっとやる気のある声に変わる相棒。くそう、可愛いやつめ。
「じゃー、一旦寮戻って、7時に◯◯駅前な」
「りょーかい」
というわけで、俺たちはビアガーデンへ行くこととした。

「お待たせー」
「おう、ちょうどだな」
どちらも遅刻することなく、待ち合わせ場所に到着。門限破りも覚悟の上、念のために2人とも届けを出してきた。
「じゃー行きますか」
「おう!」
そしてふたりで駅前ビルの屋上のビアガーデンへ突入した。

2時間飲み放題、食べ放題のバイキング形式のビアガーデン。俺も割と食べるし、野明はあのちっこい身体のどこに収まってるのか謎なくらい食べるし飲む。この駅前のビアガーデンはそんな俺たちにはとてもいいところだった。
平日と言えども混んでいたが、若干の余裕があった。周りは仕事帰りのサラリーマンやOL。ちょっと学生の姿も。
「「かんぱーい!」」
ジョッキを合わせて、グイグイと。一気に半分くらいなくなった。
「ふいー」
「んー、夏はこれだねー」
そして取って来た料理に手をつける。割とオーソドックスなものばかりだが、むしろこれがいい。
「やーっぱりビールには枝豆だよねえ」
そう言いながら野明はビールと枝豆という黄金コンビを堪能している。
なんでそんなに可愛いんだ。
顔がにやけそうになるのを抑えて、なんとか普通に振る舞う俺。唐揚げに手を伸ばす。
野明としては単に同僚とか友達と飲みにきた感覚なんだろうけど、俺としては大好きな女の子とのデート、というつもりでいる。本人には到底言えないけれど。まあ、割り勘の時点でデートもへったくれもないわけだが。
テーブルの隅にメニュー表がある。飲み放題から外れる、別料金の飲み物が書いてある。ちょっと高級な日本酒や焼酎、生のフルーツを使ったサワーとか、そういったもの。
「あ、別料金に黒ビールあるんだ。」
「飲むか?そんぐらいならおごっちゃる」
「うそ。いいの?」
「おう、俺も飲みたい」
そして運ばれる黒ビール。泡が細かくてふわふわしている。最初は苦くてなんだこりゃ、と思ったものだが、慣れればこれが美味いのだ。
「こういうまったりした飲み方もいいよねえ。あ、フィッシュ&チップスもらってきちゃお。食べるよね?」
そう言って席を立つ野明。本当に、お前の身体のどこに入るんだ。
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