パトレイバー小説

□I wanna be your man
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今日は7月7日。
どこから持ってきたもんだか、整備班が笹を飾っていた。

「あっすまちゃーん、なんか書かない?」
シゲさんが短冊をひらつかせる。
「えー? じゃあ『無病息災』とか書いといて。俺の名前で」
「またまた。遊馬ちゃん適当だねえ。もっとなんかないの?例えばさ、泉ちゃんと」
「わー!!それは言わないで!」

シゲさんは知っている俺の思い。
周囲にバレたらえらいことになる。
とくに、野明本人には。
「あたしがどうかしたの?」

本人登場かよ!
「おお、泉ちゃん、短冊書かない?」
「あ、そっか。今日七夕だね。書く書く」
そう言って野明は短冊とペンを取った。
「えーっと……いざとなると、なんか、迷うねえ」
えへへ、と笑いながら頭をかく野明。
そんな仕草さえ可愛いと思う俺は、すでに重症だと自分でも分かってる。

何を書いたもんだか迷った俺と野明は、隊員室に一旦持ち帰って、思いついたら書くことにした。
「遊馬なに書く?」
「それがなー。あんまり思いつかねーんだわ。無難に商売繁盛とか俺が書いても皮肉にしかならんだろ」
「あはは、そうだね。警察か篠原重工か。でもさ、なんかないの? 確かに遊馬、あんまり欲なさそうだけどさ」
「んー……まあ、そうだなあ……」
本当に欲しいものは、すぐ目の前にあるんだけどな。
……そんなこと、言えるわけないだろ。

というわけで。
俺は超無難な、子どもみたいな願い事を書いた。
『カッコいい車がほしい 篠原遊馬』
「うっわ!即物的!」
「うるせー、他に思いつかなかったんだよ。そういうお前はどうなんだよ」
と、まだ何やら書いている野明の短冊をひらりととりあげた。
「ああ!何すんだよ遊馬!見るなよバカ!!」
「あ?人の見といてそりゃねーだろ」
そこに書かれてあったのは
『I want to be together with A 』
「……『A』? しかも英語だし。中学生レベルの」
「ああもう、書きかけだってば! それに日本語でダイレクトに書くと恥ずかしいんだよ!」
まあ、日本語ダイレクトは恥ずかしいって気持ちは分からんでもないが、でもこの場合、英語でも十分恥ずかしくないか??
で、『A』で始まる、野明の一緒にいたい人……いや、人じゃないか、この場合。
「この『A』ってのは『ALPHONSE』ってわけなんだな。相変わらずだなお前」
「……そ、そうだよ!もう、飾りに行くよ!」
と、野明はさっさと自分の名前を書き入れて整備班のところへ向かった。
「なんだよ、『ALPHONSE』ぐらいフルで書きゃいいのに。変なやつ」

まあ、……俺が本当の願い事を書けるわけないだろ。英語でも日本語でも。
『野明の彼氏になりたい』
だなんてさ……。
あーこっぱずかしい!!

でもまあ、車、ほしいよな。
そこはウソじゃないし。うん、まあ、これでよしとしよう。

−−−−−−−−−−−−−−−−


ああもう!
フルでなんて書けるわけないじゃないか!
みんなにも見られちゃうんだし!

……本当はこう書きたかったんだよ。
『I want to be together with Asuma forever. 』

……さすがに無理、だよ、フルでなんてさ。
言えないよ……

こんなのでお星さまに伝わるのかな……

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