パトレイバー小説

□Widow's peak
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数年後。
「おはよーす」
「おはよ」
「寝癖ついてるぞー」
そして遊馬はあたしの前髪を上げる。
「こら。またやってる」
「ん、そーいや昨日知ったんだけどさ」
「なに?」
「富士額って、Widow's peakって英語では言うらしいんだ」
「ふーん、直訳するとなんになるの?」
「widowってのは未亡人、peakは頂上とか峰とか。どうもあっちの方じゃこういうおでこの女性は未亡人になるっていう迷信があったらしい」
「ええっ!そうなの?」
「面白いよな、山に例えるのは共通してるくせに、日本ではなんか縁起良さそうで、あっちじゃ縁起でもないことなんだぜ」
「本当だねえ。文化って不思議なもんだ」
すると、遊馬はあたしのおでこにキスをした。
「俺たちどっちが先に死ぬかなんて知らねーけどさ、俺は絶対にお前を早いうちに未亡人になんかしないからな」
「ん……ありがと。そういえば、未亡人の男性版ってなんていうの?」
「そういや聞かねーな。男やもめとはよく言うけど……」
「じゃ、あたしも遊馬を早く男やもめなんかにしない」
「おう、約束だぞ」
「うん」
そう言って軽くキスをし、あたしたちは朝ごはんの準備をはじめた。

今日は、あたしたちのはじめての結婚記念日。
あたしたちが今こういう生活をしているのも、今考えると、富士額がきっかけだったのかな……
もしかしたらパンクロッカーのような寝癖にも感謝すべきなのかも。直すの面倒だけど。
今夜は奮発してちょっといいお店でディナーの予定。
お願いだからトラブルとかありませんように!トラブルなんかあったら本当にパンクスみたいに叫んで暴れまくってやるんだから!


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