赤井家
□3:転校
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「おはよ」
翌朝、秀也はムスッとした表情でLDKに顔を出した。
「「おはよう」」
秀一と白峰が挨拶を返す。秀也はダイニングテーブルの自席に座る。
秀一は読んでいた新聞を折りたたみローテーブルに置くと、ソファーからダイニングテーブルに移った。白峰も台所でエプロンを外し、着席する。
「「「いただきます」」」
家族3人の朝ご飯が始まる。
「…母さん。オレ、転校するよ」
秀也はトーストにマーガリンと苺ジャムを塗る。
「一晩視てみたけど、どのルートを辿っても結局はこの時期に転校ってなってて、恐ろしくなったよ」
「あら。あれから検証してたの?」
白峰はスムージーを飲む。
「当たり前だよ! 何のための能力なのさ!」
秀也はトーストを齧る。その斜め前の席では、秀一がトーストにマーガリンを塗り始めている。
「…死ぬの、ホントメンドイ」
秀也はため息をついた。白峰は焼いたウインナーにフォークを刺す。
「…まぁ、死ぬのはこれが最後よ」
「うん。次はどこの学校? 苗字は? 引っ越すの? 父さんとは一緒に暮らせる?」
秀也は矢継ぎ早に質問する。
「次は帝丹小。苗字は雪村。引っ越しはしないわよ。杯戸町のアパートを退居するだけ。秀一とはこのまま一緒に暮らすわよ」
白峰はヨーグルトにグラノーラを投入した。ザクザクと食べる。
「そっか。良かった」
秀也は安堵した。秀一はサラダをモグモグと食べる。
「段取りは?」
「大丈夫。転校後に事故死したことにするから」
「遺体は?」
「本人たちのが山中にあるわ。登山中の滑落死でね」
「顔はこれからか?」
「ん? あぁ、さっき骨格から変えたわよ。死亡日時や周辺状況はこれからイジるけど」
「ホォー。仕事が早いな。歯形やDNAは?」
「本人たちのを使うわ。田中母子は一般人でないとね」
「それはそれは」
秀一は肩をすくめた。田中母子がサードアイでないとわかれば、しばらく公安を欺けるだろう。