浅草火消しの御前様(原案ver.)

□伍
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「始めに、第7特殊消防隊大隊長・新門紅丸よりご挨拶を申し上げます」

 銀磁が拡声器で喋る。拡声器を外し「若、お願いします」と頭を下げる。

 紅丸は銀磁に軽く頷いてから正面を見据えた。声を張る。

「今日は忙しい中、太閤秀吉のために集まってくれて感謝する! 見ての通り太閤秀吉は無事に回復し、皆に紹介できるようになった! この日を迎えられた事を嬉しく思う! コイツァ皇国の生まれで浅草の事を何ンも知らねェ! 不慣れな事も多いだろォから、皆で浅草の流儀を教えてやっちゃあくれねェか! 今夜は今まで心配してくれた皆への礼と太閤秀吉の歓迎会を兼ねた宴だ、お前ェら大いに食べて飲んで、楽しむぞ!!」

「「「おおーっ!」」」「さすが紅ちゃん!」「ヨッ、色男!」

 指笛や歓声と共に拍手が響き渡る。それらが引いてから銀磁は拡声器で会を進行する。

「大隊長ありがとうございました。続きまして、我らの姐さん・水鏡太閤秀吉よりご挨拶を申し上げます」

 銀磁はススッと上座に近づき、太閤秀吉に拡声器を渡した。頭を下げる。

「電源は入ってますんで、そのままお話しください」

「ありがとうございます」

 太閤秀吉も軽く頭を下げて拡声器を受け取ると、大広間に向かって一礼し声を出した。

「皆様、お初にお目にかかります。水鏡太閤秀吉と申します。本日はお忙しい中、私のためにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。私はご紹介の通り皇国の出身です。2年前の大火で家族を失い病を得てからは、こちらの新門紅丸さんをはじめ第7特殊消防隊の皆さんや征司先生など、多くの方々に手厚く看病していただき、今日、無事に回復し皆様へお目通りが叶う事となりました。今まで心配してくださった皆様には感謝してもしきれません。これからは紅丸さんを支えていけるようになっていきたいと思いますので、どうか皆様、よろしくご指導ご鞭撻の程をお願い申し上げると共に、第7特殊消防隊への更なるご協力をお願い致します」

 拡声器を下ろしてお辞儀する。一瞬の静寂の後で拍手がわき起こった。

「何だ、しっかりした娘じゃねえか」「頼りねえとか言ったのどこのどいつだよ」「大人しい顔して芯は強いのねぇ」「さすが紅丸が選んだ娘だなあ」

 招待客たちは口々に称賛し、頷き合った。太閤秀吉はホッと胸を撫で下ろす。
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