浅草火消しの御前様(原案ver.)

□肆
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 双子の部屋は幼女2人にしてはそこそこ広かった。恐らく、ここにいる限りはずっと2人一部屋で使わせるために、あらかじめ広めの部屋を宛がわれたのだろう。

 室内は綺麗に片づけられており、小さな箪笥と本棚、文机、ショルダーバッグ、座布団が2組ずつある。玩具箱には縫いぐるみや積み木、お手玉などが無造作に詰め込まれていた。

「よし、運ぶか…」

 紅丸は右手の人差し指と中指を揃えて立て、両の瞳を光らせた。壁際に並んだ小さな箪笥や本棚がボッと炎をまとう。

「!?」

 太閤秀吉は度肝を抜いた。

「もっ、もももも燃えてますよ!?」

 恐怖に顔を引き攣らせながら指をさし、紅丸の袖をグイグイと引っ張った。紅丸が首を捻る。

「そりゃ俺が発火能力を使ってっからなァ」

「!?!?!?」

 太閤秀吉が驚愕しているうちに紅丸は他の家具も炎をまとわせて持ち上げた。双子は炎の中でショルダーバッグを肩に斜めに掛け、スパーンと押し入れを開けた。自分の枕と座布団を脇に抱える。

 太閤秀吉は、炎など全く意に介していない双子に身を震わせた。

「ヒカゲちゃんヒナタちゃん、熱くないの…?」

「「?」」

 双子は首をかしげた。互いに顔を見合わせる。

「熱くねぇぞ?」

「こんなのヌルイくれぇだ!」

 炎の中でカラカラと笑う。紅丸が太閤秀吉を自身の後ろに下がらせて家具たちを浮かせたまま廊下に出す。

「こいつらも能力者なんだよ」

「ええっ!?」

 太閤秀吉は身を乗り出そうとしたが、紅丸にスッと止められた。太閤秀吉は紅丸の肩口の火事羽織をギュッと掴む。

「こんなに小さいのに…?」

「あァ。もう自分で炎もまとえるぞ」

「そこまで!?」

 太閤秀吉は目眩を起こしそうになった。

「能力者多過ぎませんか…?」

「そォかァ?」

 紅丸は首をかしげた。部屋を出た双子が太閤秀吉の両脇から心配そうに見上げた。

「姉御大丈夫か?」

「病がぶり返したのか?」
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