浅草火消しの御前様(原案ver.)

□伍
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 ガタッ、ガタッと鳴った襖の合図を受けて、銀磁は立ち上がった。招待客たちに一礼し、拡声器で声を張る。

「えー。本日はお忙しい中、我らの姐さんのためにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます」

 ざわついていた大広間がピタリと静かになった。皆が銀磁のほうを見やる。

「ただ今より、我らの姐さん・水鏡太閤秀吉の快気祝い並びに歓迎会、そして御披露目会を開催したいと思います。本日の司会進行を務めさせていただきます、私、第7特殊消防隊小隊長・銀磁です。皆様、よろしくお願いします」

 銀磁がお辞儀する。大広間に拍手が響いた。

「イヨッ、銀磁!」「キマッてるねえ!」

 招待客たちから歓声が上がる。出だしを上手くやれた事で銀磁は度胸がついた。

「それでは、“浅草の破壊王”こと第7特殊消防隊大隊長・新門紅丸ならびに我らの姐さん・水鏡太閤秀吉と中隊長・相模屋紺炉、ヒカゲ、ヒナタの入場です。皆様、拍手でお迎えください」

 案内役の隊員がスッと襖を開く。大広間の隊員たちや招待客たちが拍手で迎える。

 5人が入室した後、案内役の隊員もささっと大広間に入ると、襖を閉めて自席に戻った。フウッと一息ついて拍手をする大勢の中に混じる。隣の隊員が「大役お疲れさん」と労う。

 5人は太閤秀吉を中心に右に紅丸、紺炉と並び、左にヒカゲ、ヒナタと並んだ。太閤秀吉の後方には紺炉が活けた大きな花瓶が2つ。5人は上座に整列すると、太閤秀吉に合わせて深くお辞儀した。拍手が鳴り止む。

「うっ…」

 太閤秀吉は奥までズラリと並ぶ招待客たちに眼を向けて、息を呑んだ。末席なんて遠すぎて顔が判別できない。そして隊員たちと招待客たちの全員が、無言でジイーッとこちらを注視している。

「大丈夫だからな」

 紅丸は横目で太閤秀吉をチラリと見やった。小声で諭す。

「皆お前ェを歓迎してるんだ、気楽にいきな」

「は、はい」

 太閤秀吉は紅丸の紅い瞳と眼を合わせてから、眼を閉じてフウッと息を抜いた。眼を開け、スッと正面を見据える。

 その様子に紅丸はフッと口角を上げた。紺炉も、心配はなさそうだと思って視線を正面に戻す。双子はあまり緊張していないのか、「コレ旨そうだぞ」「早く食いてェなぁ」とそれぞれ小さな声で足元の食膳を眺めてニヒヒと笑っている。
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