浅草火消しの御前様(原案ver.)
□参
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それから紺炉と隊員は宴の準備のために大広間に戻った。紅丸は双子を連れて太閤秀吉に詰所内の案内をした。双子は太閤秀吉の作った氷の蝶々に夢中で、それぞれ指先に乗せたり肩に留まらせたり追いかけたりして遊んでいた。
「アレは生きてはいねェんだよな?」
紅丸は訊いた。双子が廊下を先に進みながら、ヒラヒラと舞う氷の蝶々と戯れる。紅丸も太閤秀吉も、キャッキャとはしゃぐ双子を後ろから見つめた。太閤秀吉が頷く。
「はい。全て私の造形と操作ですよ」
「ヘェ…」
紅丸は、まるで本物の蝶々のように宙を翔ぶ様を眺めた。感心する。
「まぁ細部は適当ですけどね」
太閤秀吉は誤魔化すように笑った。
「それでも凄ェよ」
紅丸は各部屋の説明をしながら奥へ進む。大災害前には人間は陸海空の幾つもの生物たちと共存していたというのだから、その知識や知恵、経験は今の人間とは比べ物にならないだろう。
「お前ェの知ってる範囲で良いからよォ、勉強だけじゃなくチビ共に色んな知識や知恵とかを教えてやっちゃあくれねェか?」
「はい。あまり大した事は知りませんが、私で良ければ知ってる事を教えますよ」
太閤秀吉は承諾した。紅丸は太閤秀吉の頭をポンポンと撫でる。
やがて、太閤秀吉と双子たちの部屋となった客間に到着した。
○×○×○×○×○×
【完】