浅草火消しの御前様(原案ver.)

□弐
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 駄菓子屋の老女が双子に近づく。

「2人とも良かったねえ。紅丸ちゃんのお嫁さん、元気になったんだって?」

「「!?」」

 老女はニコニコしているのに、双子は蒼白した。

「ババアテメエ何で知ってやがる!」

「クソッ。せっかく姉御の情報を売りつけてやろうと思ったのに!」

 双子は地団駄を踏んだ。老女は一瞬きょとんとしてから、ニイッと口角を上げて笑った。銀歯が光る。

「“何で”って…、ババアを舐めちゃいけないよ?」

「「くっ…」」

 双子は怯んだ。しばし睨み合いが続く。

「はははっ。征司先生に訊いたんだよ!」

 老女は大口を開けて笑った。種明かしをする。

「大人しそうで淑やかな娘だって言うじゃないか。奥の座を任せるにはちょっと頼りないかもだけど、紅丸ちゃんの気に入った娘だ、何とかするだろうよ」

 老女は、今日はお祝いだからと双子に好きな駄菓子を1つずつ無料で渡した。

「ババア気前が良いな!」

「長生きするぜ!」

「そうかい。ありがとうよ」

 双子は老女に手を振って駄菓子屋を後にした。老女も双子を見送る。

「…あんなに小さかった悪たれが、もうお嫁さんを迎えるとはねえ…」

 懐かしそうに店内を見やる。寺子屋にはほとんど通わなかった天性の悪ガキは、棟梁の厳しい修行にもへこたれずに食らいつき、強大な炎を自在に操り纏を振るい、ついには若頭になった。

 今では立派に浅草を背負って立っている。

「紅丸ちゃんが倅を連れて来るまで、私もお店続けないとねえ…!」

 老女は目尻に溢れた嬉し涙をぬぐった。

 精悍な伊達男に成長した紅丸の子だ、きっと浅草は次代も安泰だ。


○×○×○×○×○×


【完】
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