浅草火消しの御前様(原案ver.)

□肆
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「銀磁さん。招待客全員揃いやした」

「ありがとう。若たちを呼んできてくれ。呼んだら襖の前で待機な」

「へい!」

 隊員は頭を下げると、銀磁の元を離れた。他の隊員たちの後ろを通って、大広間の中ほどに設けられた襖からそっと廊下に出て行く。

 銀磁はフウッ、と息を抜いた。隣の同僚が声をかける。

「緊張してんのか?」

「そりゃそうさ。姐さんの初舞台で司会進行役の俺がヘマする訳にはいかねぇからな」

「お前ぇさんなら大丈夫だろ」

 同僚は微笑んだ。

「何せ、若と紺炉さんをはじめ、俺らが認めた防御の要なんだからよ」

「もー発破かけんなよっ」

 銀磁は胃を押さえた。同僚がガハハと笑う。

「シキさんのバカ旨ぇ料理食えば治るだろうよ」

「はあっ…」

 銀磁はソワソワとした。ちょこちょこと後ろを振り返る。

 銀磁の後ろには上座に繋がる襖があり、先程呼びに行った隊員が紅丸たちを襖の前に誘導したら、合図を出してもらう手筈になっている。

 目の前の食膳には焼き魚や天ぷら、煮物、吸い物、炊き込みご飯、刺身、蒸し物、和え物など、和食を中心とした豪勢な料理が並ぶ。盛り付けも丁寧で、眼で楽しむ意匠がふんだんに施されている。

 銀磁はバチンと両手で自身の頬を打った。フウッ、と息を抜く。隣の同僚が「おっ、気合い入ったか?」とガハハと笑った。


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