赤井家
□4:サバゲー
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翌朝、大きくガタンと揺れた車内で頭をぶつけて秀也は眼を開けた。
「あれ…?」
後部座席から起き上がる。周りは太い幹とよく繁った葉ばかりで薄暗く、人の気配もしない。
「…キャンプ場は…?」
キョロキョロと見回す。荷台には業者から借りたキャンプ&バーベキューの器材がロープで固定されている。
C-1500はすでに人の手の加えられた道を走っていなかった。
「あ、起きた?」
助手席の白峰がふり返る。彼女もガタガタと揺れる車内でバランスを取るのに精一杯で、シートベルトを締めた状態で両手両足を突っ張っていた。
「樹海にしようと思ったんだけどね、案外人多くて急遽変更になったの」
「へ、へぇー…」
秀也は半眼した。
「仕方ないさ。今じゃ樹海も観光地だからな…」
秀一は道ではない道を進んで行く。悪路は折り込み済みのようで、愛車が揺れても動じなかった。
車は森を抜けて開けた平地に出る。
「…この辺りならいいだろう」
秀一は車を止めた。降りる。
「お前たちは車内にいろ」
「うん」
行ってらっしゃい、と白峰は手を振った。秀一は周辺を探りに行く。
秀也は後部座席から身を乗り出した。
「ここどこ?」
「廃村」
「は…? なんでそんな所に…」
母親の返答にいぶかしむ。キャンプとバーベキューをするなら、樹海近くのキャンプ場で充分だ。
「秀一がね、どうせするなら本格的にしたい、って」
白峰はニコニコと爆弾を落とす。
「あと秀也に拳銃教えたいって」
「はぁ!?」
秀也は素っ頓狂な声をあげた。白峰はさらに追い討ちをかける。
「ライフルまで持って来てるのよ。ホラ」
と秀也の足元を指差す。
「※◇〒@▼&%*!!?」
秀也は座席の上で体育座りをした。つい数分前までライフルバッグと並んで横たわっていたらしい。
「に、日本でこんな物所持してたら即刻逮捕だよ…?」
「あ、それは大丈夫。私たち秀一の協力者だから、向こうが何とかするわよ」
「それは頼もしいね…」
秀也は半笑いした。どちらも規格外すぎてツッコミが追いつかない。