赤井家
□4:サバゲー
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白峰は杯戸町のアパートの近くのコンビニにいた。
秀一が息子を後部座席に乗せて駐車場に赴く。
「ありがと」
白峰はC-1500を見つけると、すぐに助手席に乗り込んだ。
「ね、見て」
白峰はホクホク顔で封筒から紙幣を出し、夫と息子に見せびらかす。
「ホォー。リサイクルも馬鹿にならんな」
「…母さん、どうやって値上げ交渉したの?」
秀一は感心し秀也は呆れた。
「んー、秘密♪」
白峰は紙幣を扇のように広げた。杯戸町のアパートにある家電・家具などの不用品を出張買い取りしてもらった結果だ。
「秀一、秀也。このお金で家族旅行しない? また昔みたいに、キャンプとかバーベキューとかしましょうよ」
「いいな」
秀一は賛成する。秀也は戸惑った。
「えっ父さん仕事は?」
思えば父親は、日本に来てからいつも家族と朝夕の食卓を囲み、新聞を読みながら煙草をふかしている。
秀一はふり返った。
「本格的に任務に就くのは来週からだ。下準備はもうほとんど済ませたしな」
「じゃあ、それからは…」
「帰宅も不規則になるな」
「そっか…」
秀也はしゅんとした。秀一は息子の頭をなでる。
「心配しなくとも、ちゃんと帰って来るさ」
「…うん。気をつけて」
秀一は眉をハの字に下げる秀也に優しく微笑んだ。
「じゃあさっそく、器材のレンタルしましょ」
白峰が手早くスマホでキャンプとバーベキューのセットを業者から借りる。
「…って、場所は?」
秀也はギョッとした。秀一が提案する。
「できれば人のいない山奥が希望だ。どこかないか?」
「んー、山梨か長野辺りとか?」
白峰がスマホの地図を見せる。秀也も覗く。
秀一はある地名を見て眼を輝かせた。指をさす。
「ここ面白そうだな」
「いいわね。ここにしましょ」
白峰が同意する。
「ここって…青木ヶ原樹海だよね?」
秀也は眉をひそめた。
「近くにキャンプ場あるから。器材はそこで受け取りましょ」
「詳しい地図を見せてくれ」
秀一はスマホを受け取ると、航空写真に切り替えて樹海を調べた。
「ふむ…ここなら良さそうだ。む。調べると他にもいくつか候補地があるな…」
ニヤリと笑って白峰にスマホを返す。
「じゃ、今から食材の買い出しね」
「了解」
秀一はスーパーに車を走らせた。
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