赤井家
□4:サバゲー
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「…今回お前も“参加”するのか?」
「うん。最終チェックは母さんがするけどね」
だから死亡は面倒なのだ。日本警察の鑑識を、検視官を、科捜研を、監察医をも騙さなければならない。書類の操作だけで済む行方不明や失踪のほうが、遥かに簡単だ。
「…死体はどこから調達するんだ?」
秀一は白峰の言葉を思い出す。死体は元々戸籍を保有していた本人たちで、そこに手を加えているのだと。
「…事件とか事故とかで行方不明になった死体を誰にも見つからないようにして動態保存しておくんだよ。そうしないと自然に還っちゃうから」
「ホー。戸籍などはどうしてるんだ?」
秀一は息子に次々に質問する。
「戸籍は、ご先祖様たちが太平洋戦争後の混乱に乗じていくつか創ったって聞いてるよ。それを今全部管理してるのは母さんだけどね」
「なるほど。本当に実在してるように根底から創ったわけか…」
「うん」
秀也はプリンを食べ終わり、茶を啜る。
その架空の戸籍を維持するために母親は毎月どれだけの資金を投入しているのだろう。
役所や税務署、年金機構などの公的機関に疑われずに書類上生きているフリをし続けるのは、容易ではない。
(…オレもそのうち、ソレを引き継ぐんだよなぁ…)
秀也はため息をついた。秀一も白煙を吐く。
(…その維持費とて“制約”のモトだろう…)
1日でも早く、そんな労力から妻を解放してやりたいと秀一は思った。
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