赤井家

□4:サバゲー
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 秀一は指先を少しピクリと動かした。眉根に力が込められる。

「…最初に“死亡”した時か…」

「…まぁ、うん」

 秀也はバツが悪そうに視線を泳がせた。

 秀一は疑問をぶつける。

「…5年前の船の沈没でも思ったんだが、お前たちはどうやって日本に還されたんだ?」

 どちらも他人の目の前で行方をくらませている。アメリカでのタクシー車爆発炎上に至っては、ジンの眼前で別人の母子の焼死体を用意しDNAまで書き換えている。

「…フツーに海流に乗ったんだよ」

 秀也は種明かしをする。

「ホォー…」

 秀一は眼をギラリと光らせる。

「あのジンに気取られる事なく現場を去って、か?」

「まぁ、うん…」

 秀也はうなずいた。尋問されている居心地の悪さを感じる。

「弾かれる時は五感の全てを弱められるからどんな人たちにも感知できないし、サーモグラフィーとか赤外線とかの機械にも引っかからなくなるんだよ」

「なるほどな」

 秀一は納得した。

 それで戸籍のある日本に強制送還されたという事だ。

 その時白峰は、留学を含めてアメリカで過ごした10年間を日本で過ごすように“制約”を受けた。

 5年前は“制約”の残った状態で妻子を日本国外へ連れ出そうとしたから、船は沈没した。

「白峰がアメリカから弾かれた理由はわかるか?」

「さあ?」

「ではなぜ、お前も3歳の時に“制約”を受けたんだ?」

 本来ならば白峰1人に課せられるものを、息子である秀也も一部を負担しているのはなぜか。アメリカとの二重国籍を持つ息子は、アメリカに弾かれる道理はない。

 秀也はうつむいた。

「…オレはまだ、3歳の時にはリーディングしか使えなかったんだよ」

「…つまり、本来ならば自分が行うはずの焼死体の準備も偽装も全て白峰がこなしたから、結果的に2人共が“制約”を受けたという事か?」

「うん…。ごめん…」

「お前が謝る事じゃない。必要だったから白峰はそうしたんだろ?」

「…うん」

 秀一は煙草に火をつけた。フーッと白煙を吐き出す。
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