赤井家
□3:転校
3ページ/4ページ
敵となれば恐ろしいが、味方となればこれほど強力なものかと感嘆する。
しゃべりながら、食べながら、白峰によって淡々と業務が進められていく。
その様を秀也も視る。
(鮮やかだなぁ…)
余計な呪文を唱えたり、派手なアクションをも必要としない。ただ念じるだけで成立する。便利な能力だ。
「そういえば、すぐ近くの小学校で大丈夫なの?」
秀也はウインナーを齧る。杯戸小と帝丹小は存外近い。
「うん。むしろその方が安全かな」
「どういう意味?」
秀也は首をひねった。白峰はクスリと口角を上げる。
「肉体の次は頭脳を鍛えろって事よ」
「???」
秀也はますます首をひねった。杯戸小と似たり寄ったりな帝丹小で頭脳を鍛えるとはこれいかに。が、ここで問うてもこの母親は答えてくれないとわかっている。
「今日さっそくアパートの解約を申し出て、担任の先生にアポを取るわ」
「送迎は俺がしよう」
秀一が名乗り出る。
「ん。ありがと」
白峰はニッコリと微笑んだ。秀一も満更ではない顔をしてお互いに見つめ合う。
「コホン」
秀也はわざとらしく咳払いをした。顔の熱を冷ますように、ズズズッとスムージーを飲む。
「続きはオレのいないところでやってよね…」
「あらヤダ」
「ハハ、まいったな」
白峰はほおに手を当てて恥じらい、秀一は肩をすくめた。こういう部分は普通の夫婦と変わらないのかもしれない、と秀也は思った。
「じゃあ行動開始ね」
白峰が両手をポンと合わす。秀一も秀也も両手を合わせた。
「「「ごちそうさまでした」」」
□□□□□□□□□□