赤井家

□3:転校
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 敵となれば恐ろしいが、味方となればこれほど強力なものかと感嘆する。

 しゃべりながら、食べながら、白峰によって淡々と業務が進められていく。

 その様を秀也も視る。

(鮮やかだなぁ…)

 余計な呪文を唱えたり、派手なアクションをも必要としない。ただ念じるだけで成立する。便利な能力だ。

「そういえば、すぐ近くの小学校で大丈夫なの?」

 秀也はウインナーを齧る。杯戸小と帝丹小は存外近い。

「うん。むしろその方が安全かな」

「どういう意味?」

 秀也は首をひねった。白峰はクスリと口角を上げる。

「肉体の次は頭脳を鍛えろって事よ」

「???」

 秀也はますます首をひねった。杯戸小と似たり寄ったりな帝丹小で頭脳を鍛えるとはこれいかに。が、ここで問うてもこの母親は答えてくれないとわかっている。

「今日さっそくアパートの解約を申し出て、担任の先生にアポを取るわ」

「送迎は俺がしよう」

 秀一が名乗り出る。

「ん。ありがと」

 白峰はニッコリと微笑んだ。秀一も満更ではない顔をしてお互いに見つめ合う。

「コホン」

 秀也はわざとらしく咳払いをした。顔の熱を冷ますように、ズズズッとスムージーを飲む。

「続きはオレのいないところでやってよね…」

「あらヤダ」

「ハハ、まいったな」

 白峰はほおに手を当てて恥じらい、秀一は肩をすくめた。こういう部分は普通の夫婦と変わらないのかもしれない、と秀也は思った。

「じゃあ行動開始ね」

 白峰が両手をポンと合わす。秀一も秀也も両手を合わせた。

「「「ごちそうさまでした」」」

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