アンジェリークシリーズ
[1件〜3件/全3件]
□「あなたと綴るラブストーリー」 第一章『恋の前奏曲(プレリュード)』その1 NEW!
アンジェリークspecial2 セイラン×コレット+リュミエール
□「あなたと綴るラブストーリー」 第一章『恋の前奏曲(プレリュード)』その1 NEW!
アンジェリークspecial2
セイラン×コレット+リュミエール
「あなたと綴るラブストーリー」
第一章『恋の前奏曲(プレリュード)』その1
・…・…・…・…・…・
三十五日目、一週間の内で最も聖地が賑わう日の曜日。
暖かな日差しと心地好いそよ風が空と大地の間を満たし、緑溢れる自然の傍らで人々は憩っている。そんな長閑な外の風景を無視するかの様に一人、部屋に閉じこもっているアンジェリーク。
感性の学習の事とレイチェルに育成をリードされた事でダブルパンチを食らった彼女は、すっかり心を曇らせていた。机に向かい頬杖を付いたまま、何処か一点を見つめている。心此処に在らず、と言った様子だ。
ピンポーン
と、不意に呼鈴が鳴り響いた。彼女はハッとしてはい、と返事をしながらドアに近付いて行き、開けた。すると目の前には水の守護聖の姿があった。
「こんにちは、アンジェリーク」
彼は笑顔で挨拶をした。
「リュミエール様…。…えっと…今日はお約束、していませんでしたよね?」
アンジェリークは思いがけない来客に戸惑い尋ねた。
「おや、約束が無いと貴女をお誘いしてはいけませんか?外は良い天気ですし…気分転換にでも、と思いまして…」
リュミエールはちょっぴり悪戯っぽく、こう返した。
「…いっ…、いいえ。そんな…。…でも、あの…私、今日はご遠慮します。そう言う気分じゃなくて…ごめんなさい」
アンジェリークは慌て気味の口調で答えた。そして僅かに顔を曇らせた。
「…そう言う気分じゃないって…何かあったのですか?アンジェリーク…。もしや、学芸館で問題が起こったのでは…?」
リュミエールは素早くアンジェリークの異変を察知し、優しく問い掛けた。それまで俯き加減だった彼女は図星を指されると真っ直ぐに彼の顔を見据えた。次の瞬間、目に涙を浮かべ、その涙は頬を伝って零れ落ちた。
「……リュミエール様っっ…」
声にならない声で言いながらアンジェリークはリュミエールの胸に飛び込んだ。そして、今度は遠慮する事無く大粒の涙を流し続けた。そんな彼女を彼はただ黙ってそっと両の腕に包み込んでやった。
□「あなたと綴るラブストーリー」 第一章『恋の前奏曲(プレリュード)』その1続き NEW!
しばらくの間を置いて、漸く話が出来る状態に落ち着いたアンジェリークは全ての事情を彼に説明し始めた。涙の跡を残し、時折言葉に詰まりながらーー…。
「…そうですか…。そんな事が…。だから金の曜日に庭園前でお見掛けした時にも元気が無かったのですね…」
一部始終を聞かされたリュミエールは先ず、アンジェリークを気遣う。
「…私っ…、明日からセイラン様やジュリアス様にどんな顔をしてお会いすれば良いのか…またキツイお叱りを受けるんじゃないかと…怖くて…」
再び彼女の目から涙が零れた。それを隠す様に両手で顔を覆う。
「…アンジェリーク…。セイランもジュリアス様も貴女を心配していらっしゃるのですよ。…まあ、彼らの言い方は少々キツかったかも知れませんが…。どうか誤解なさらないで下さいね」
静かに彼女を宥めるリュミエール。その言葉には彼女だけで無く、周りに対しての配慮もあり、彼の優しい人柄が滲み出ていた。
「…はい、リュミエール様…。それは…分かっているんですけど…色んな事があったのでちょっと混乱してて…。リュミエール様が優しくしと下さるから…私…つい、甘えちゃって…すみません」
アンジェリークはリュミエールに素直に従う。一度は取り乱したものの、彼女は自分の置かれた状況をきちんと弁えていた。そこは女王候補に選ばれた所以だろう。
「良いのですよ。アンジェリーク…。分かって下さっていれば…。こうして貴女のお話をお聞きするぐらいしか力になれませんが…。それでも、少しでも心が晴れるようなら私は…」
リュミエールは切な気な表情で彼女を見つめた。アンジェリークはその表情にドキッとし、心臓の音が次第に早まっていくのを感じた。
「…あっ…、有難う…ございます、リュミエール様。私、もう大丈夫です。明日から元気に笑えそうです」
頬を赤らめて精一杯の笑顔を彼に向けた。
「ふふ…。それは良かったですね。では、改めてお誘いしても宜しいでしょうか?貴女に是非お見せしたい物があるので、私の館にご招待したいのですが…?」
リュミエールもまた、少し照れながらアンジェリークに話し掛ける。
「ええっ、リュミエール様のおうちに…ですか?…はいっ、喜んで参ります!」
途端にアンジェリークは張り切って椅子から腰を上げて立ち、威勢良く申し出た。その様子を見てリュミエールはクスクスと笑い出した。すると、漸く彼女は自分の取った行動に気付き恥じた。
「あっ…えっと…私ったら……」
そう言いながらもう一度椅子に腰掛け、両手を頬に当てた。彼女は更に真っ赤になっていた。
「では、早速参りましょうか」
彼はそんな彼女を愛らしく思い、柔らかな表情で見つめた。
こうして、二人は連れ立って外出して行った。
→第一章その2へ続く。
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