幼き花の誉れ 誉れの花の章
□1章 邪竜百年戦争 オルレアン
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カルデアの食堂。今現在は昼頃を過ぎ、ただでさえ少ない職員達も再び作業に取り掛かっていた―――その中でも、三人は例外だったが。
人形のような外見の少女がある少女を見た瞬間、表情が一変した。こんな人間はこのカルデアにいただろうか?何故この場所にいるのだろうか?視線の先にいる少女はこちらを気にも留めず優雅にティータイムと来た。
‥‥ここは声を掛けるべきなのだろうか?否、様子を見るべきだろうか?
あれやこれやと策をめぐらそうとしている、人形のような外見が印象的な少女ミシェル ・アルテミシア―――通称ミシェ。先程話していた例外の一人だ。
彼女は突然の病で床に伏した義理の兄の代理人としてカルデアに来訪していたのだが、その小さな体にはこれでもか、という程の魔術の才能で満ち溢れていた。結果としてあの緊急事態の中、奇跡的にサーヴァント召喚に成功している。
そんな彼女が、今。明らかに動揺しているというのは普通ならあり得ない状況なのだ。
未知との遭遇、と言わんばかりに動くことのないミシェの行動を見守る姿があった。空色の瞳を持った少年、藤丸 立香。例外の二人目である。
生憎、立香は一つ上の姉しかおらず、自分よりも年下の子どもとどう接すればいいのか全く分からなかった。
‥滅茶苦茶声を掛けたいけど怪しまれたらまずいよな!!
勝手にドキドキハラハラしている立香の背後に、ある影が現れた。
「―――おいアンタ。うちのマスターに何しようとしてんだい?」
光がない若草色の瞳が、立香を射抜かんとする勢いで睨みつける。思わず小さな悲鳴が漏れてしまう‥‥が黒髪の青年―――サーヴァント・アサシンは「まあまあ、冗談だよぉ」とからかうように笑ってみせた。だがしかし、立香にとっては笑うにも笑えない冗談だった。
絶対冗談じゃないだろ‥‥!!殺気出しやがって‥‥!!
‥‥と言いたくなる衝動に駆られるが“人を殺める”ことに長けたクラス、アサシンである彼に勝負を挑むなど自殺行為にも等しい為、衝動を何とか抑える。
「‥ねぇ、座んないの?」
今まで黙りこくっていた少女は、静かにティーカップを置いたと思いきや、ミシェの翡翠の瞳を見つめながらそう口にした。
「‥え、えっと」
突然に話題を振られてしまったミシェは思わずたじろいでしまう。少女の瞳はこちらをずっと見つめるばかり。
「‥まあ、いいや。お好きにどうぞ」
何ともまあ、自分勝手な。少女は再びティーカップに口をつける。
「あ、あの」
とにかく、何か話題を振らなくては!
そう思いながらも挙動がしどろもどろになってしまうミシェ。彼女を見ることもなく、適当にくつろぐばかりの少女。
「‥何」
「‥貴方は、誰ですか」
またティーカップを置いた。そして考える仕草をすると「あぁ、そっか。まだ名乗ってなかったか」と言っている。
「私、リクス‥よろしく。ミシェル ちゃん」
「は、はあ」