新訳、平行線の行方
□Episode2 役職返上
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「約束通り来たのは褒めてあげる」
友人が言うセリフじゃないだろう、と言いたげなまなざしを友人に向ける。ここは今日の試合の舞台になるスタジアム―――つまりはゴールデンウィークに差し掛かって間もない頃まで、結局何も出来ずにこの日を迎えてしまった。
「あぁ、そうだ。試合に誰が出るかとか聞いた?」
「知らない、けど」
自分がそう言えば友人はあからさまに呆れた表情を浮かべ、「本当に変わったのね」と一瞥するように一言発した。
「誰に聞けばいいのか分からないのにどうすればいいの?」
「だから、大谷さんに聞けばいいじゃない」
「私がつくしちゃんと交流が無いこと知っているよね?」
「交流は作らないといけないのに」
「本が友達の君にだけは言われたくないね」
そう悪態を突けば足を蹴られる。もちろん怪我をしていない方を軽く小突く程度に何度も何度も蹴ってくる。「ごめんってば」、と苦笑いして言えば気が済んだのか「早く行きましょう」、とせかしてくる。
「星章には天才ゲームメイカーとフィールドの悪魔がいるの」
「その呼び名、公式でそう呼ばれているの?」
「他に驚くことがあるでしょう?」
彼らのあの後についてはクラスメイト達が嫌という程に話していた。だからこそリアクションもそこまで大きくはなかったが、むしろ噂程度に聞いた話が確信に変わった程度で済んだ。万が一心の準備だってしていたつもりだ。
だからこそ、全く聞いたことのない「フィールドの悪魔」という新鮮なワードの方が気になってしまった。去年のフットボールフロンティアにそんな呼ばれ方をした選手はいただろうか。
「知らないの?これ」
友人のその言葉と共に現れたカードに目が行く。カードスリーブに入っていることから丁寧に扱われている様子が素人でも分かった。商品化、という解釈でいいのだろうか。それにしても見慣れた人間が映っているような―――